悪魔の生贄が救国の乙女になるまで

「さあ、時は満ちた。ルイス・フォン・クルム。約束の娘を貰い受けに来たぞ。」

クルム侯爵家に建てられた聖堂の中に突如現れた男がそう告げた。

その場にいた全ての人間が、その男に目を奪われた。
冴えわたる美貌にしなやかに引き締まった肉体。
有り得ない程の美しさを誇る男は、その頭から生える2本の角と身にまとう圧倒的なオーラによってとても普通の人間には見えなかった。

「悪魔アルベルト・・・」

クルム家の当主であるルイスは呟いた。
いかに若かったとはいえ、いかに切羽詰まる状況であったとはいえ、自分はよくこんな恐ろしい異形の者と契約を交わしたものだ・・・。
今さらながら身体の震えが止まらない。

恐ろしい・・・

しかし、アルベルトとの関係も今日で終わりだ。
契約が成就すれば、自分と彼とは全く何の関係もなくなるのだ。
左胸に刻まれた入れ墨のような契約の印も消えてなくなるはずだ。

そんな明るい未来に思いをはせ、ルイスは笑顔になった。
「ええ。こちらの娘です。」
そして、自分の右後ろにたたずんでいた長女レイアの方へ顔を向けた。