偽りの無い貴方を助けたくて




その後生徒指導室に私達二人は入って、静かに体育の増田先生がやってくるのを待っていた。



爪をいじって、優雅そうに足を組んでいる姿を私は腹の底からぐつぐつと煮え返るような熱気に包まれ、俯いていた。



増田先生は入ってきた途端に、私を一目見ると机なんて吹き飛びそうなほどの咳払いをして、人睨みしてきた。


「里奈、お前から話があるが。



人の事情に突っ込みすぎなんじゃないか?」




えっ……と耳を疑う。



「お前は、晴海先生のことが好きだからって証拠写真を取るほど、追いかけていたそうなんだろ?」



と、わざとらしく目の前に原稿用紙を置かれて。



凛ちゃんがプッと吹き出した。



「好きだからって、人の事情に突っ込みすぎるからこんな事になるんだ」



「じゃあ、先生は黙認してくれって言いたいんですか?」




「そんなことはない。



ただ、黙認しない「理由」を書いてほしいんだ」




黙認しないーーー「理由」ーーー?




上を見上げると、増田先生の顔が不気味に歪んでいるのが見えた。




こんなにも、辛い経験をした人が自信の体験を語る上でこんなにも、胸をナイフで切りつけられるような。




目の前にいる、増田先生は多分、あの日の晴海先生と女校長の話を詳しく聞いて自分の欲求を満たしたいんだ。



そんな心の叫びを、私は晴海先生の立場になって見れたんだろうか……。


辛い記憶をわざわざ晴海先生に思い起こさせるようなことを、私はしていた。


さっきの凛ちゃんの言葉は、間違っていなかったんだ。



凛ちゃんの言っていることも、正しい。


なのに私はなんで、晴海先生の気持ちも知らずに一言カードなんて企画を考えて一人で突っ走っていたんだろう。




「ねぇ、早く書きないよ?


汚い偽善者さん!!」



私は、絶望していた縁の中で突き飛ばされるように、凛ちゃんに罵倒される。



ゆっくり、原稿に手をつけていこうとした時だった。


扉が猛烈なスピードで、開いて一人の少女が現れた。



「増田、何してんの。


里奈に、触らないで!!」



と、増田先生を決死の様子で引き離したのだ。


後ろにいた百合が、私の背中を擦ってやって来た。



ふと、私の原稿を見た希が何をしようとしたのかを察して。



「この、セクハラジジイ!!」



と拳を突き出して、増田先生を殴ろうとした寸前。



「はい、ストープッ!!」




扉の前に、留美子さんが現れた。



「増田先生、私第三者委員会でもあり、教育委員会の留美子です。



さっき、何をしようとしていたのかを調べさせてもらいますね」



私は、ほっと胸を撫で下ろすが心のモヤモヤはまだ晴れない。