「節約してるんだ。
家計のために」
ーーー家計のため………?
「なんで、節約を?」
晴海先生は遠くを見て、黄昏れる。
……きっと答えたくないんだね。
でも……なんで、そんな重要な事ーーー私に答えてくれたの?
聞かれたくなかったんじゃないの……?
「だから、お前も頑張れよ。
俺も……頑張るから」
優しく微笑んで、頭を撫でてくれた晴海先生。
スーツ姿の爽やかな、ミントの香りが何処か胸を締め付ける。
先生の様子を見たら………きっと「心配するな」と言いたいんだろう。
「なら、これ………」
私は、お弁当箱を開いて、先生に小さなおにぎりを渡した。
ラップにくるまれた、枝豆入りスクランブル卵おにぎり。
「受け取れない。
春海……ごめんな」
と、拒否られる去ろうとする晴海先生だったけどーーー。
私は、晴海先生の袖を掴んでた。
それは、理由は分からない。
たけど、これ以上引き止めなかったら。
どこか遠くに晴海先生が行く気がしてーーー怖かったから。
好きだからこそ、遠くに行ってほしくないって気持ちが胸いっぱいで、苦しくなったから。
「何処にも行かないで」って、本当は、私はそう、言いたかったんだと思う。
だけども、その言葉がーーー晴海先生を私は傷つけた。
「生徒のお前に、心配される筋合いはない」
ゆっくりと振り返る。
その姿はまるで冷徹な鬼のような………能面。
「これ以上、余計なおせっかいをするのは辞めてくれ。
俺は、生徒に助けられるほど弱くは、ねぇーんだ」
颯爽と去って行く、晴海先生。
私は「好きな人」を怒らせた……。
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