偽りの無い貴方を助けたくて



「アンタが………変なことを吹き込んだのね!!」



鋭い視線を百合に向けて希は、怯える百合の胸ぐらをつかんで、風に飛ばされるビニール袋のように、百合は転がった。



「もう二度と、里奈に近づかないで!!


相手の問題なのに、なんで私達が巻き込まれなきゃいけないのよ!!


私達だって、日々の生活があるの!!


分かってないから、こんな大事に里奈を巻き込んでやったんでしょ!!」



まくし立てるように、希は百合を蹴飛ばした。


百合は、ケホッとむせてやはり、冬場を耐え忍ぶうさぎのように、怯えて私に助けを求めるのように覗き込んでいた。



私は掴まれていた、希の手を振り払う。



希は驚いて、再び掴みだそうとしたけれどーーー私はもう一度、振り払ってパシンッと希の頬を叩いた。




「いやなの……いやなの!!」




夏の暑さの陽炎は、周囲の鼓膜に届くように音を反響させて、通行人が一瞬こちらを振り向くぐらいに、私の声音は響いた。



ーーー私は負けたくなかった。



「誰か一人を犠牲にして、皆が幸せになる世界を……私はーーー見たくないよ!!


だから、百合は悪くない!!!」




魂の叫びも、希は鼻で笑って「んな……本気にならなくても!!」と眉毛を潜めた。




「だって、相手は大人の男だよ?


嫌なら、嫌って振ってしまえばさ、いいわけなのになんでアイツは、校長にペコペコして家族を守んないわけ!?



嫌だったら、自分で教育委員会に相談すればいいだけじゃん!!


アタシ達が、やる仕事じゃないよ!!」




確かに、希の言っていることは間違っているわけではない。



嫌なことを、嫌ということは大切だ。



「だけどもね、嫌なことを嫌って直接言うとーーー違う人を傷つけることだってあるんだよ?


うまく行かないんだよ、大人になると。

希……それに今貴方がしている黙認は、現実世界で生きて震えながら傷ついてる生徒が……傷つくことでもあるんだよ?」



「なんで?

関係ないじゃん!!」



「大の先生が、こんな事を起こしてたらーーー百合みたいな子がどうやって学校に来ればいいか……わかんなくなるでしょ!!」



希は、はっとして百合を見るが腰に手を当てる。



「そんなの……学校なんて、生きるか死ぬかの世界。


生き残れないやつが悪い………っていうか、世の中そんなものよ!!


自分から、戦わなければいけない世の中……。


そうでしょ!?」



私は百合の手を取って、希の顔を見なかった。



それは、希に失望したからというのもあって、私はそうじゃないと思うから。



だって、皆で考えることができれば平和な世界だって作ることは出来るって思う。



今こうして生きていられるのは、お父さんやお母さん、周りの大人が平和について、考え抜いた、結果何だとしたらーーー。



自ずと理解できるから。



希は、呆れた顔をして、そして怒りに震えて。



「もういいわ!!


勝手にしなさい!!



学校が壊れても、知らないから!!」




と去っていった。