目を伏せて黙り込む私に、
三沢先生が腕を組んで言った。
「何でも言ってみな?俺、これでも口は固い方だから安心して。」
「でも……。」
「七実先生のことが心配なんだ。
話してくれないと、俺の方がどうにかなりそうだから。」
その言葉に、胸がぎゅっとなる。
視線を上げると、
眼鏡越しの優しい瞳が、まっすぐ私を包み込んでいた。
私は重い口を開き、吉村先生の事を話した。
三沢先生は真剣な表情で、
一言も遮らず、最後まで聞いてくれた。
話し終えると、
三沢先生が強い口調で問いかけた。
「一応確認するけど、七実先生は吉村先生のアプローチを負担に思っている、それで間違いない?」
「はい。」
「わかった。俺がなんとかする。」
キッパリと言い切る声に、思わず息を呑む。
「なんとかって……」
「俺に任せて。吉村先生には俺から強く抗議する。」
「でも……吉村先生とはこれからも仕事上ご一緒することも多いので……」
争いごとが苦手な私は、弱々しくつぶやいた。
「七実先生。
中途半端な優しさは、かえって相手を傷つけるんだよ?
わかってる?」
「…………。」
「七実先生がしなければならないのは、
はっきりと拒絶の意思を示すことだ。」
「……はい。」
「俺を利用したら?」
「え……?」
「七実先生は俺と付き合っている。
そういうことにすればいい。」
「そんな……申し訳ないです。」
「吉村先生には俺からそう伝える。
あの人との力関係は、俺の方が強い。
だからもう七実先生に手出しはしないはずだ。」
「……三沢先生の彼女さんに悪いです。」
「俺には彼女なんていないよ。
今はね。」
意味深な声でそう言った。
今は……?
「大丈夫だ。
七実先生のことは、絶対に俺が守るから。」
「ありがとうございます。」
私は深く頭を下げた。
本当は、吉村先生のことが怖くてたまらなかった。
泣きそうな気持ちで顔を上げると、
三沢先生の眼鏡の奥の優しい瞳が、
そっと私を見つめていた。



