二人だけの秘密

「山田さん、大丈夫…?」

度々、私の意識が散漫するので、九条さんは真剣に心配してくれている。
九条さんの声が好きすぎて意識が飛んでますなんて絶対に言えないが、私にとってはご褒美でしかなかった。

「だ、大丈夫です。すみません…」

「無理してない?体調が悪かったらいつでも言ってね」

真剣に心配してくれている九条さんに申し訳ない気持ちになった。ただあなたの声が私のフェチズムに刺さっていますなんて言えない。

「は、はい。今のところは大丈夫なので、お気遣いありがとうございます」

九条さんは怪訝そうな顔をしていたが、私は気づかないふりをしてそれ以降も仕事を続けた。
感じ悪い態度を取ってしまったが、九条さんには私の秘密がバレたくなかった。
私の保身のせいで、九条さんを傷つけてしまい、罪悪感に襲われた。
だけど本当のことは言えないので、胸にモヤモヤした気持ちを抱えたまま、九条さんと仕事をするしかなかった。


          *


次の日から他の社員の方も合流し、全員揃った。
改めて挨拶をし、お互いに自己紹介を終えた。皆さん良い人達ばかりなので安心した。
皆さんとは仲良くお仕事をしているが、九条さんとは相変わらず気まずい空気が流れていた。
皆の前ではお互いに上手く取り繕っているが、二人っきりになると空気が一気に重くなる。
こんなことなら隠さずに、本当のことを言えばよかったと後悔している。