二人だけの秘密

「…山田さん?」

応答がない私を心配して、九条さんは私に声をかけてくれた。
私は慌てて九条さんの問いに応えた。これ以上九条さんに迷惑をかけないようにするために。

「すみません。ぼーっとしてました。肩の力は抜かないとダメですよね。気をつけます」

笑って誤魔化した。まさか九条さんの声にうとれてました…なんて口が裂けても気持ち悪くて言えない。
すぐに気持ちを切り替えて、仕事を始めた。まずは自分の荷物の荷解きから。
元々そんなに荷物がないため、荷解きはあっという間に終了した。
手持ち無沙汰になってしまったため、九条さんに声をかけた。

「九条さん、すみません。荷解きを終えました」

事前に荷解きを終えたら任せたい仕事があると言われていたので、次の指示を仰ぐために九条さんにちゃんと報告をした。

「さすが山田さん。仕事が早いですね」

推しに褒めてもらえるなんて、贅沢なご褒美だ。
頭の中で何回も繰り返し再生された。九条さんに褒めてもらえた声と言葉を…。

「それじゃ早速、仕事をお願いしてもいいですか?」

頭の中はずっと九条さんに褒めてもらえたことでいっぱいだが、現実は仕事を提示された。
今は仕事に集中しなくてはならない。九条さんに迷惑をかけないようにするためにも。

「はい、大丈夫ですよ。私は何をすればいいですか?」

九条さんから仕事内容について説明を受けた。これまでこなしてきた業務内容とそこまで変わらなかったので、すぐに仕事を引き受けた。
引き受けた仕事もあっという間にこなし、九条さんに提出した。
するとまた九条さんは仕事の手際が良いことを褒めてくれた。また私は脳内が九条さんの褒め言葉と声で支配されていた。