ひみつの姫君~男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!~

「へえ、イルさんには憧れの騎士がいるんですか。」
三兄弟の中ではイルが一番おしゃべりで話しやすい。
たった今、イルが騎士を目指すきっかけになった人の話を聞かせてもらっていた。

「そう。リンドブルムのローゼンハイム将軍っていうんだけど、めちゃくちゃ強くてカッコいいんだ。アルノーとリンドブルムは友好国だから、騎士団も3年に1回交流戦をするんだ。開催地は交代でさ。そこで将軍を見る機会があったんだ。」
「へえ。そうなんですね。その交流戦、ロイも参加してたのかな?」
リアは領地で自分に剣を教えてくれた商人のことを思い出していた。

「ロイって、リアに剣を教えてくれたっていう人?」
イーリスに聞かれ、リアは頷いた。
「うん。昔、リンドブルムで騎士をしていたって言ってたから。」
「騎士団にいると強制参加だから、その時は参加してたんじゃないか。リアの戦法は、その人に指導されたのか?」

イルに尋ねられ、リアは満面の笑みで答えた。
「そうなんです。小さいから近づいて下半身やアキレス腱を狙えって。最悪、股間をつけば相手はしばらく動けなくなるから、その間に逃げろって言われました。」
「うっわ。小さい子供にえげつない指導するやつだな。」
イルは自分の股間を押さえながらつぶやいた。

「それで、将軍はどんな感じの方なんですか?」
リアが尋ねた。
「10年くらい前に交流戦がアルノーで開催された時、親父に連れて行ってもらったんだけど、その時の優勝者だったんだ。もう圧巻の剣技で他者を全く寄せ付けず、圧勝でな。」
その時の様子を思い出しているのか、イルの瞳がキラキラしていた。
イルがいかにその人を尊敬しているかが話しぶりや表情から伝わってくる。

イルさんにとってのヒーローなのね。

「へえ、私もその将軍の試合見てみたいなあ。」
リアが羨ましそうな表情を浮かべた。
「来年、アルノーで開催されるし将軍も来られるんじゃないか。」
イオが教えてくれた。
「そうなんですか?」
「騎士団に所属してると家族を呼べるからさ。来年リアもイーリスと一緒に見に来いよ。」
イルにそう言われ、リアは嬉しそうに頷いた。

                 ※

食後はみんなで道場にもどり、イオとイルの練習試合を見学させてもらうことになった。
もちろん真剣でだ。
防具をつけ向かい合った二人は、立っているだけでものすごい迫力だ。

本物の騎士の模擬戦を、こんな近くで見れるなんてすごいわ。
手紙で父さまに自慢しよう。

リアはワクワクして試合が始まるのを待っていた。

カン カン カン

剣を打ち合う音が響き渡る。
イオの方が身体が大きくパワーがあり、イルの方が動きが俊敏なかんじだ。

「イーリスのお兄さんたち、カッコいいね。」
「フフ。リアから直接言ってあげてよ。きっと、大喜びするよ。」

特にイオ兄さんは・・・

イーリスは心の中で付け加えた。

試合はイオの勝利で終わったが、白熱したいい試合だった。