ひみつの姫君~男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!~

体操服に着替えたリアは、先ほどの制服姿の時よりも、もっと子供っぽく見えた。

イーリスも変わった毛色の子と仲良くなったもんだな。

次兄のイオはしげしげとリアを眺めた。
全てが小さくて、こじんまりとしている。
ワッツ家の遺伝子と対極にあるような子だ。

もともとイオは馬鹿でかい身体に似合わず、子リスや子ウサギなど、小さくて可愛いものが好きなのだった。

なんか、これだけ小さいとそれだけで尊い気がするな。

イオがそんなことを考えている間に、イルとリアが道場の中央に移動し始めていた。
「リア、メガネは危ないから外しておいて。イオ兄さん、預かってあげて。」
授業の時にメガネが飛んで行ったのを思い出したのか、イーリスがリアとイオに声をかけた。

イオに声をかけたのは、たまたまその時一番リアの近くにいたのがイオだったからだ。
リアはパタパタとイオの方へ行くと、メガネを外してイオに手渡した。
上を向き、ニコッと笑いお願いした。
「これ、お願いします。」

ドクンッ

メガネを外したリアは、予想外にとても可愛かった。
キラキラ輝く金色の大きな瞳に上目遣いで見上げられ、イオは息をのんだ。

なんだ、これ。可愛すぎる・・・。

差し出されたメガネを預かると、リアはきびすを返しイルの方へと走って行った。

ああ、こんなことならイルに相手を譲るんじゃなかった・・・。

イオが頭の中でぐるぐるそんなことを考えていると、イーリスの合図で対戦が始まった。
イルもメガネを外したリアを見て驚いた一人だ。

うわっ。
こんな可愛い子の顔にケガさせたらどうすんだよ。
相手って、何すりゃいいんだ?
打ってきたやつを、受けときゃいいのか?

そんなことを考えながら、ペコリとお辞儀をするリアをぼやっと見ていたら、一瞬で彼女が視界から消えてしまった。

ん?

気が付くと、リアはイルの真ん前に移動しており、右後方に剣を構えていた。
小さすぎて、近づかれすぎると視界に入らないのだ。
自分の左横から腰辺りに剣を振り下ろされ、イルはとっさに木刀で左側を防御した。

うっわ。低い所ばっか狙われて、やりにくいな!

ふと、イルはイーリスが先日言っていた言葉を思い出した。
”すごく強いわけじゃないんだけど、今まで戦ったことのないタイプで面白いよ。”
妹が言ってた意味が分かった。

騎士団にこんな小さいやついないし・・・

腰より下ばかりを狙ってくる攻撃は、正直力を込めにくいし受けにくい。

そしてその低さにようやくイルが慣れてきたころ、リアが突然さらに一段低くかがんだ。
それと同時に、アキレス腱の辺りにポコっと木刀が当てられた。
「いてっ。」
「はい、勝負あり!」
イーリスの声が道場にひびいた。

実戦ではないからリアも力を手加減しているし、騎士団で鍛えているイルにとって全く大した痛みではない。
ただ、これが真剣だったとしたら、リアの力でも腱を切ったり、ダメージを与えることは出来ただろう。

誰だよ。こんな小さい女の子にこんな危ないこと教えたヤツは!

イルは左足の足首をさすりつつ、心の中でぶつぶつ知らない誰かに文句を言った。