ひみつの姫君~男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!~

今日は金曜日だし、明日からの週末には何しようかな~。

リアがそんな事を考えながら生徒会室に入ると、いつもは空席になっている書記の席にゴージャスな美女が座っていた。

うわあ、綺麗な人・・・

色味の濃い金髪はゆるく巻かれ、緑色の大きな瞳につややかな白い肌。
同じデザインの制服のはずなのに、この美女が着ると、どこかの有名店のオーダーメイド服のように見える。

3年生のエリザベス・オースティン様ね。

クリス王子の兄ヘンリー王太子の婚約者、つまり未来のアルノー王妃だ。

「お初にお目にかかります。1年生のリア・アーロンです。爵位は男爵ですが、くじで生徒会に入り、会計補佐をさせていただ・・・」
リアが挨拶をしていると、エリザベスはガバッと立ち上がった。

「あなた!何このメガネ。制服もブカブカじゃない。前髪は分厚くてガタガタだし、肌も日に焼けてカサカサしているわ!散髪はいつ行ったの?化粧水や乳液はつけてる?髪の毛もパサついてるわね。ヘアオイルはつけているの?」
怒涛のごとく身だしなみチェックをされ、リアは目を白黒させた。

「ヘアオイル・・・?いえ。」
どうにか最後の質問にだけ答えることができた。
「エリー、リアが固まってるよ。一つずつ話しかけてあげて。」
クスクス笑いながら、部屋の奥にいたクリスが助け船を出してくれた。
「クリス。これはひどいわ。想像以上よ。あなたも、もう少しアドバイスとかしてあげなさいよ。」

クリス王子に、こんなに気安く話す女性は初めて見た。

さすが未来の王妃様・・・

驚きつつ、あまりの勢いに圧倒され、リアは茫然とエリザベスを見つめた。
これ呼ばわりされたのも怒るところなのかもしれないが、こんな芸術品みたいな人に言われれば、仕方ないかと反論する気にもならない。

「一つずつ・・・。そうね、じゃあ、まず制服ね。どうしてそんなブカブカなの?オーダーメイドも注文できるでしょう?」
「あの、これが既製で一番小さいサイズだったんです。オーダーメイドも見たんですが、高額で・・・。学院に入ったら身体も大きくなるだろうし、勿体ないかなと思ったんです。うち、あまり裕福でもないので。」
恥ずかしそうに答えるリアに、エリザベスは納得したように頷いた。
貧乏人と見下している様子はない。

「確かにオーダーメイドにしても、すぐに駄目になる可能性はあるわね。なるほど。次に・・・、その髪型は?誰に切ってもらってるの?」
「自分で・・・」
その返答にエリザベスは目をクワッと見開いた。
「前髪なんてガタガタじゃない。右のほうが長くなってるし、美容院に行きなさい。お金がなければ、せめて友達に切ってもらうとかしなさい。」
「は・・・はい。」
正論過ぎて反論の余地がない。

「次に、肌の手入れは?日にも焼けているわね。何もつけていないの?」
「はい、朝、顔を洗ったら、そのまま・・・。日焼けは、稼業でオレンジの収穫を手伝ったりして屋外にいることが多くて。」
「ちゃんとお手入れしなきゃ。それに屋外に出ることが多くても、帽子をかぶるとか、日焼け止めをぬるとかいろいろできるでしょう。」
「はい・・・」
もはや、はいとしか答えられない。

「エリー、落ち着いて。リアは母親が早く亡くなったから、そういうことを指導してくれる人が身近にいなかったんだよ。」
またもやクリスが助け船を出してくれた。
「そんな事を言って甘やかすから駄目なのよ。これは一大事よ。緊急に対応が必要な状態よ。この子、これからうちに連れて帰っていいかしら?」

えっ、なにそれ?

リアはそう思ったが、クリスは満面の笑みで頷いた。
「ああ、全然大丈夫だ。よろしく頼んだよ。」

今まで何度も助け船を出してくれたクリスの突然の裏切りに、リアは涙目で彼を見た。

「可愛くしてもらっておいで。」
クリスには笑顔でひらひらと手を振られ、リアはそのままエリザベスに公爵邸まで連行されることになったのだった。