「何がいいかな?」
オーナーが柔らかく笑う。
「記憶飛ぶくらいの強い酒一つ……この人に」
「おい!
なら二つでしょ!一緒に飛ばした方がよくない?」
「……それは……そうか。
うわぁ、もう最悪。まじで」
あまつかくんは頭を抱えた。
「……あまつかくんって、こんな感じだったんだね」
思わず口から漏れる。
いい。とてもいい。
あの可愛いふわふわ系が、口も悪いし、目つきも鋭いし。
え、めっちゃよくない!?
「そうです……あー、隠してたのに。
わざわざ会社から遠い店選んだのに!」
「なんか……ごめんね?」
「いいです。
とりあえず飲んで、できれば綺麗に忘れてください」
そう言って、マスターが運んできたグラスを手に取る。
ひと口。
——あ、美味しい。強いのに、喉にすっと落ちる。
そして、隣のあまつかくんはいつもとまるで違う顔で、じっとこちらを見ていた。
気づけば、何杯もおかわりしていた。
「新山先輩……酒、強くないですか?」
隣で、あまつかくんが項垂れている。
「あ、そうだね?まだいけるよ?」
「……やめましょう」
ぽそっと言って、額を押さえる。
「大丈夫?とりあえずタクシー呼ぶよ。
お店ももう閉まる時間だし」
隣で項垂れているし、このまま放っておくわけにもいかない。
そして、二人でタクシーに乗り込むと、ふわりと肩に触れた。柔らかい髪がかすかに揺れる。
……だいぶ酔っちゃったかな?随分飲んでたもんな。
そんなに“忘れたかった”んだろうか。
気づけば、自分の家の前だった。
え、これ……連れてきちゃった?あれ…お持ち帰り……?
いやいやいや、後輩を?そんなつもりじゃ……!
でも、あまつかくんは、ただ静かにしている。
とりあえず、まずは落ちつこう。スッと私は深呼吸をした。



