うーん、どうしよう。まだ飲み足りないし……そう思っていたら。
「唯人、こっちこっち」
「おー」
「疲れてんな」
「まあ」
「もしかして、まだ“あざと可愛い”続けてんの?」
「まじか、それはお疲れさんだわ」
隣の席で、スーツ姿の男性たちが盛り上がっている。
「いや、もうやめられねぇよ。
“可愛い後輩”のポジションに居座ったら、キャラ崩せねーし。
口角上げてニコニコして……顔も喉も疲れるわ」
「まじか、面白っ」
「で、片思いしてる先輩とはどうなってんの?」
「どうもこうもねぇよ。
完全に“可愛い後輩”としてしか見られてねぇ」
「あらま……」
「しかも、多分その先輩、好きな人いる」
「え、まじで?」
「ゴリゴリマッチョで高身長が好きっぽい。俺なんかほぼ同じ身長だし、ヒール履かれたら抜かれる」
「あー」
「もうそれ、土俵にすら立ってねぇ!」
「でもお前、最近ジム通ってんだろ?
筋肉ついてなくね?」
「これでも頑張ってんだよ!
体力もあるし動けるのに……筋肉だけはつかねぇ!身長も伸びねえ!」
「それ骨格の問題じゃね?」
「身長はもう伸びないだろ、諦めろ」
「やめろ、トドメを刺すな。まじで」
「で、それ何?」
「あー、ガチャガチャ」
「そんなのハマってんの?」
「まあ。シークレット狙ってんの」
「へぇ〜」
え……あまつかくん?
可愛いふわふわの彼ではなく、スーツを着崩し、ネクタイを緩め砕けた話し方をしている少し大人な彼がそこにいた。
まるで別人。これ、声かけない方がいいよね。絶対、知られたくなさそうだし。ていうか……あまつかくん、好きな人いたんだ。知らなかった。そっと立ち上がろうとした、その瞬間—
ガタンッ。膝がテーブルにぶつかった。痛い。
「お姉さん、大丈夫ですか?すごい音しましたよ?」
あまつかくんの友人らしき男性がこちらを見る。
そして——パチリ。視線がぶつかる。
「……新山先輩」
しまった、という顔のあまつかくん。
「や、やっほー……あまつかくん」
ひらりと手を振ると、友人たちが一斉にこちらを見て、
「「え?え?えーーー!」」
と、驚愕の声を上げた。
あまつかくんは、完全にバレたと悟ったような、なんとも言えない罰の悪そうな表情をしていた。



