ライオンのサーカス

 
 


 映画を見終わった後、アイス屋さんへ行こう、という話になって、二人は商店街へ出た。

 天気の良い涼しい午後、街路樹の周りには花が咲いていて、吹き渡る春風からは花の香りがする。

 二人が青い庇のアイス屋さんに行こうと角を曲がった所で、モネは、今一番会いたくない人を見つけた。

 日の差すアイス屋さんのテラス席で、シロウがコーヒーを飲んでいたのである。

 モネは、うっと唸って、カナトの影に隠れようとした。

 シロウが先にモネ達に気が付いた。


「あ」

「あ」


 顔をしかめたシロウに、カナトも気が付いた。


 シロウは一気にまくし立てた。

「モネ、どういう事?。貴族協定で、君はカナトと二人ではもう出掛けないって約束したよね?。約束破りだ。酷すぎるよ、モネ。」

「だる。モネがお前なんかと約束するはずないだろ。毎回毎回鬱陶しいんだよ。」

「カナトなんかと出掛けないで、僕と出かけてよ。ああずるい。嫉妬で死にそう。なんで僕じゃないんだよ?」

「モネのフィアンセは僕だ。毎回横槍を入れてくるの、いい加減にしろよ。モネが僕以外を選ぶなんて、あり得ないんだよ。」



 言い合いを始めた二人を、店の人は珍しそうに見ている。


 仕方ないので、モネ達はシロウの居た席で、3人でアイスを食べた。


「今日はおいしくない、こんなもの」

 
 大好きなチョコレートのアイスを食べながら、シロウが八つ当たりした。


「モネ、なんでカナトなんかと遊ぶの?。アイスが食べたかったんなら、僕が連れてくのに。」

「迷惑。今日は僕とモネのデートだったんだ。お前がこうやって入る余地なんかないのに。予定外。」


 ライムのアイスを食べながらカナトが文句を言った。


「ムカつく。フィアンセ権返せよ。ばったり会って良かった。デートなんかますます成功させるもんか。」

「お前が入って来なければ、これから僕の屋敷に帰って、豪華な夕食を食べて、いつもみたいにうちに泊まっていくところだったんだ。まったく迷惑な奴。大嫌いだ。」

「僕だってお前なんか大嫌いだ。モネ、今日はこれから僕の城へおいでよ。ご馳走するよ。カナトんちなんかと比べものにならない貴族御用達のコックを雇ってる。」

「ああん?。僕んちのコックは王室付きを引き抜いたんだぞ。比べものにならないはこっちのセリフ。モネ、相手にすんなよ。」

 
 それからカナトは突然、


「靴」


 と一言言った。
 (モネはドキっとした。)


「なんだよ?」

「僕のこの新しいブーツ、モネが僕に買ってくれたんだ」

「靴を?」


 シロウがカナトの足元を見ると、カナトは勝ち誇った顔で頷いた。

 シロウが叫んだ。


「ずるい!」

「そういう関係なんだ。シロウ、お前の入る余地なんかないんだよ。残念だったね。」


 ずるいずるいと連発すシロウと目を合わせないようしながら、モネはストロベリーのアイスを食べた。