ライオンのサーカス


 ユウタのアトリエは、学校の近くの通りにある、こぢんまりした一軒家だった。
 広い庭には薬草やハーブが沢山咲いていて、この家が魔法使いの物であることを知らしめている。

 ドアを開けてすぐ明かりを付けると、ユウタはモネをリビングに招き入れた。


「散らかってるけど、居心地は良いんですよ」


 小さなソファにモネを座らせると、ユウタはキッチンに行って紅茶を作った。

 キッチンでジンジャーケーキを切るユウタの背中を見ながら、モネは部屋を見回した。

 部屋の壁には小物棚があり、小さな瓶の魔法の薬品がところ狭しと並べられていたが、ごちゃごちゃした部屋は不思議と居心地が良かった。


「モネ、生クリームは好きですか?」

「うん」

「良かった。僕もジンジャーケーキにはクリームを付けて食べるんですよ。」


 ユウタはトレーから紅茶と皿に盛ったジンジャーケーキを置くと、モネの向かい側のソファに座った。

 外に小雨が降り出した様で、窓の向こうから雨粒の優しい音がした。
 雨のおかげで一層心地良くなった部屋で、モネ達は話をした。

 ユウタが言うには、一人暮らしは精神的だが、時々味気ない。

 モネが、一人暮らしは寂しい、と言うと、

「僕はそうでもないですよ。」

 と言って、ユウタはちょっと笑った。

 

「一人は自由気ままで楽しいです。モネは、寂しがり屋なんですね。」

「一人の時は、家族の事ばっかり考えるよ。」

「それは考えないようにしなきゃ。いくら僕だって、姉さん達の事ばっかり考えてたら家が恋しくなりますもん。駄目ですよ、考えちゃ。」

 

 それから、

 
「一人ぼっちっていうのは、なった事がない人には分からない感覚ですよね」
 

 と言って頷いた。

 最後のケーキを銀のフォークで食べながら、ユウタは口を開いて言った。


「独り身同士。寂しくなったら、僕のアトリエに来ると良いです。それが良い。」


 そして、くすくす笑いながら、


「僕モネの事、ちょっと気に入っちゃったみたい」


 と小声で囁いた。


「なんで?」

「さあ?。気にしないでください。」


 ユウタはニッコリ笑うと、空になったモネと自分のケーキの皿の片付けを始めた。