限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

 彼女を目の前にすると、緊張する。料理をされる前の獣は、こんな気持ちなのかもれない。

 彼女の鋭い光の緑の目で睨まれれば、今にも調味料を掛けられて食べられてしまいそうだもの。

 黒い絹糸のような髪に緑色の目。紫色の体にそうドレスに、色気のある赤い唇。美しいけれど、妖艶な雰囲気を持つ女性。

 現王妃アニータ様。崖に落ち縁に必死にぶら下がる私に、命綱を投げた人。

「お久しぶりです……アニータ様」

「久しぶりね。ローレン。随分とギャレットが、貴女を気に入ったようね。驚いたわ」

 それはもう何ヶ月か前にも報告したことだけど、お前程度が自惚れるなと一蹴したのは貴女ですよね?

 私たちの関係性でそんな生意気な返しを出来るはずもなく、私は黙ったままで頭を下げた。

「アニータ様。今のままでは、計画に支障があるのでは? 僕の目から見るとローレンは必死で距離を置こうとしていましたが、彼の方から距離を詰めていたようでした」