限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

 正直、もう彼のことを好きにならずに、何もかもを終わらせてしまうにはとても難しい。世界でも最難易度を誇る数式の方が、まだ易しいかもしれない。

 好きにならないようにと距離を置くたびに、なんなく空けた距離を詰められて、ギャレット様はせっかく自分の婚約者になったのだからと、喜ばせよう優しくしようと彼なりに努力してくださる。

 こんな人を好きにならないなんて、他にどうしても忘れられない好きな人が居るくらいだと思う。

 とても、残念ながら、私には……そんな人は、居ないけど。


◇◆◇


「おばさん! もうすぐ、あんたはお役御免なんだから、私の王子様に手出ししないでね?」

「……心得ております」

 どこからか何かを見ていたのか、城の廊下ですれ違ったペルセフォネ嬢は自分の言いたいことだけ言って、フンッと鼻を鳴らして去って言った。

 向こうから近付いてくるものを、どうやって避けるのだと聞きたかったけど、やぶ蛇にしかならないので我慢するしかない。

「……あれは、バイロン家のペルセフォネか。知り合いなのか?」