限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

「悪かった。俺も君が悪いと考えている訳ではないのだが……ああ。そうだ。嫉妬しているんだと思う。君にあいつが近寄ると思うと、本当に気分が悪い。かと言って、君の立場で話しかけてくる人間を無視することも出来ないだろう。悪いのは俺だ。すまない」

 その時、ギャレット様の青い目を見て私は後悔した。本当にまっすぐで素直で、私の言葉に裏があることなんて、何も疑いもしてなくて……本当に美しくて。

 胸が高鳴り、動悸が速まった。

 こんなにも純粋な人を騙すなんて、私はなんという罪を犯しているのかしら。

「っ……申し訳ありません。今夜はこれで下がらせて頂きます」

 私は耐えきれなくて、ギャレット様に背を向けて歩き出した。名前を呼ばれた気もするけど、ドレスの裾を両手で持ち上げて立ち止まらずに早足で進んだ。

 彼に対する罪悪感なんて、捨てたはずだった。家族を守るために、私に出来ることならなんでもすると誓ったのに。

 騙す人が良い人過ぎて……罪の意識を感じて辛くなるなんて。いつまでも、世間知らずのご令嬢のままだ。