限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

 感情を見せずに淡々と彼の質問に答えた私に、ギャレット様は微妙な表情になった。

 何故、自分にそんなわかりやすい嘘をつくんだと、そう言いたいのだろう。

 ここでギャレット様に嘘をつくしかない私だって、本当の理由を答えたい。

 彼のことを大好きな……ギャレット様の婚約者となるべき女性が、それ以上偽の婚約者の私は近づくなと命じているからです。

 なんて……今までに私が思い悩んでいたこと、何もかも、全部、ぜーんぶこの人にぶちまけてしまえれば、とっても楽になることだろう。

 けれど、それは許されない。

 弟クインは十歳でまだまだ幼く、爵位を継げる成人の十八歳までは長い。婿養子で綺麗な顔しかないお父様は、しっかり者のお母様が亡くなってしまったから賭け事などの放蕩三昧を繰り返した。

 長い歴史を積み重ね伝統あるメートランド侯爵家が、もう先祖伝来の家財を売るところまで足を踏み入れてしまっている。

 早い話が私は現在、崖っぷちに居る訳ではない。もっともっと、悪い状況に居る。

 既に足を踏み外して昏い崖に転落せんとしているのに、辛うじてふちに指だけが引っかかっている。