限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

 彼女は家のことを除けば、人柄などには全く問題はなさそうではあるし……熱い恋愛に至らないとしても、長く夫婦として連れ添えば、信頼関係も生まれるかもしれない。

 いや、俺を好きなのではないかという、釈然としない思いはどうしても隠せないが。

「ああ……お前をお慕いしているはずの……あの令嬢だろ? 王太子妃の教育は特に厳しいと聞くし、今は多忙なのではないか」

 俺たち二人は勝手知ったる近道を進むため行儀悪く庭を抜け、そろそろ自分の宮に帰り着こうかといった頃に、庭の池の傍で人影を見つけ立ち止まった。

 こんな深夜なのに、池に身投げでもするつもりか? いや、そもそもここは王族かそれに仕える者しか入れない。

 誰だ?

 明るい月明かりの中池のほとりで一人の女性が蹲り、悲哀を滲ませて肩を震わせて泣いている。こんな場所で一人で? 目を凝らして見つめれば、あの見覚えのある、美しい長い金髪は……もしかして。

「もしかして……ローレンか? こんな場所で、一人で泣いているのか?」

「そうみたいだな。どうする? お前が行くか?」