限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

「ああ……上手いな。ローレンは器用だと聞いていたが、絵の才能もあったのか」

 いきなり声が聞こえて私はビクッとしたけど、低い声の主が誰かを悟り微笑んだ。

「ええ……素人で下手ですけど、良かったら何かお描きしますわ」

 夢中になってきたらギャレット様がいつの間にか隣に座り、私の描いている絵を見て楽しげに笑っていた。

「いいや。趣味でこれはすごい。俺はローレンに前々から聞いてみたいと思っていたことがあるんだが……聞いてみても良いか?」

「……はい?」

 ギャレット様は急に真面目な顔つきになり、彼の方へ向いた私と向かい合った。

「前にローレンが池の辺りで泣いていた時に、俺は偶然出くわしたことがあった。その時、まだ俺たちは婚約者になったばかりで、詳しい事情を聞くのも躊躇われた。あの時、何を理由で泣いていたんだ?」

「あ……ごめんなさい。ギャレット様。きっと、それは父の借金の工面だと思います。上手くいかないことが多くて……」

 何度か泣いていたことがあったので、彼にその時に見られてしまったのかもしれない。夜の庭園はまったく人気がないので、誰にも見られていないと思っていた。