この時間を忘れる方法があるなら

『君にとって悪くない話だと思うが?』


アルバイトをしていたカフェにいきなり押しかけた黒いスーツの男性達に無理矢理連れてこられた大きなビルの最上階で、窓際の立派なデスク越しにこちらを見据える男性に生唾をゴクリと飲む

『佐々木 結愛様、大切なお話がございます。我々と共に来てください。ご家族に関する事ですから』

そう言われて来た場所は、自分とは無縁と思えるほどの異空間で、見たこともないほど広いその部屋の入り口のドアは鍵が外からかけられているのか出られず諦めて前を向くしかなかった


「‥あの‥ッ‥どうして私なんですか?」

緊張からか声が震えているのが分かる‥‥

目の前に座る男性の整った容姿端麗な顔立ちだけでなく、頭に響く低くて落ち着いた声色、私を真っ直ぐに見つめる切れ長の瞳全てに威圧感を感じずにはいられなかったからだ


『君にしか頼めない。受けてくれる代わりに、
君の家が抱えている負債は全て支払おう。そして、契約が切れるその日までは君には不自由のない生活を保証する。』

結愛の家には父親が肩代わりして抱えている借金が確かにある

でも、そのことを知られていることにも驚いたし、すべて支払うと言ってもその金額は3000万円近くまだ残っているのだ

それを全て支払う?

信じられないような要求に疑いたくもなるが、もしこの条件を飲み込めば、両親を助けてあげられ、普通の生活に戻してあげられる