「フラワークリスタル!」
さけんだ瞬間、ぱぁっとクリスタルが光り出す!
「カスミソウ!」
うえぇっ、口が勝手に動くよっ!
わけもわからず気づいたら、まわりが真っ白空間に。
——ここ、どこ!?
さっきまで公園にいたはずじゃ、
困惑している間にも、フシギ空間は変わっていく。
光の地面に、カスミソウが!
どんどん咲き乱れていく……!
ほんのりと、甘い香りにつつまれて——。
わたしのお洋服、真っ白ワンピになっちゃった!
——なっ、なにっ!? 制服はっ!?
わけもわからず混乱中。
でも、それだけでは終わらなかった!
わたしのまわりに、カスミソウ畑。その一輪一輪から、ぽわっと光が飛び出した!
シャボン玉みたいな、たくさんのぽわぽわ。集まって、だんだんリボンを形作っていく……!
ヒラヒラリボンに、たくさんのフリル。
パニエがふわっと、宝石がキラッと。
お花の力で、どんどん飾り付けられていく。
白いコーデに、パステルピンクのデコレーション!
——かわいいっ! お花のおひめさまみたい!
さっきまでの、シンプル真っ白ワンピース。
それがたちまち、ふわふわキラキラに大変身!
頭の上がピカッと光る。
カスミソウのカチューシャ!
ふわふわ降ってきたカチューシャが、ティアラみたいにちょこんとのっかる。
同時に、お下げだった髪がスルスルスルっとほどかれて——。
ふわっと髪が伸びちゃった!
こんなに長いの、初めて……!
感動してる間にも、キラキラなにかが飛んでくる!
——ステッキ!
流れ星みたいなそれを、パシッとつかんだ。
胸の中、じんわりとあったかい感じが広がっていく……!
「フラワーヒーラー・カスミソウ! あなたに幸福が訪れますように!」
そう言って、わたしはにっこりほほえんだ。
……。
…………!?
フラワーヒーラーって、なに!?
――という感じで、冒頭のシーンにつながるわけです。
よくわからないけど、変身しちゃったっ。
ロングヘアに、かわいいドレス。
さっきまでの制服とは、似ても似つかない姿。
わたしのまわりも、いつの間にか公園にもどってる。
妖精さんたち、白髪の子、怪人さんもいる。
これは一体、どういう状況……?
「「フラワーヒーラー!?」」
すると、二人の妖精さんが同時におどろきの声をもらした。
「あっ、あのっ、なにか知ってるんですかっ!?」
すると、ヒマリちゃんが、おびえるようにツインテールをゆらした。
「あ〜……」
ツユくんも、言い淀んで目をふせる。
「うん。名前だけね〜……」
そっか、名前だけ、か……。
怪人さんたちなら知ってるかな。
と、二人のほうに目をやると——。
白髪の子は、目をまんまるに見開いていた。怪人さんも直立不動。全く動かない。
特に男の子、すごーくびっくりしてるみたい。
——あ、あれ……?
まさかみんな、なにも知らない……!?
わけのわからない現象に、しーん……と沈黙が訪れた。
——ちょっとまって、整理しよう!
フラワーヒーラーっていう、ナゾの存在。
それって多分、魔法少女……だよね?
だって変身しちゃったし、ステッキだって持ってるもん。これで魔法を使うんだよ、多分!
怪人だって目の前にいるし、わたしが戦えばいいってことだよね!
――いやっ、ムリムリムリっ!!
あんなのと戦うなんて、怖すぎるよっ!!
なんとかして、平和に解決できないかな……?
むむ〜っと考えこんでいたら、
「桜怪人、ここは任せた」
男の子、どこかへ向かって歩きだした。
えっ、帰っちゃう……!?
って、待って! まずは話し合いをっ!!
……引き止める間もなく、男の子はワープホール(!?)を作って消えてしまった。
そんなぁ……。
で、でも、怪人さんは残ってるもんね!
勇気を出して、話しかけてみよう……!
「あのっ、怪人さん、」
……。
話しかけてみたけど、反応ナシ。
「……あっ、あなたの目的はなんですかっ?」
怪人さん、フリーズ。気をつけの姿勢で動きません。
ええと……どうしたんだろう。
読みこみエラー……とか?
「もっ、もしもーし?」
怪人さんの目の前で、手をひらひら。
やっぱり、反応は無——。
「ウガーッ!!」
「いやーっ!!」
怪人さんが動き出したっ!
わたし、怖くて思わずその場から逃走!!
……全力疾走のはずなのに、またもや足がカメさん。
こっ、こういうのって、走るの速くなるんじゃないの!?
走りながら、ゼェハァいってる。
うわぁぁぁ、もうムリだよぉ……。
すると突然、ビュオォォォッと強い風が吹いた。
一緒に、ピンクの花びらがぶわぁぁぁっと舞う。
これっ、桜吹雪!? うえぇっ、なにも見えないよっ!
まさか、怪人さんの攻撃とか……?
向こうは戦う気満々ってこと!?
ど、どうしよう……。
わたし、半分涙目。
話し合いするのはダメそう、だよね。
だったら——もう戦うしかない、ってこと……!?
ごくりとつばを飲み込んだ。
戦うの、すごく怖いけど。
ステッキ、持ってる。
わたしにしか、解決できない……。
えーい! もうヤケクソだっ!!
「なんか出ろーっ!!」
ステッキを思いっきり振ってみる。
これで、怪人さんにダメージを……!
……。
……あれ?
桜吹雪、止まない。
ステッキ、なにも出ない。
状況、変わってない。
——なんで!?
変身したら、魔法使えるんじゃないの!?
試しにもっと振ってみる。うでが取れちゃいそうなくらい、ブンブンブン!
……ウソでしょ。
何度振っても、なにも出ない。
うんともすんとも言わないよっ!!
ということは——ただ、コスプレしただけ?
着替えただけの一般人が、怪人さんに勝てるわけない。
逃げなきゃ……!
走り出そうとした、その時。
「わっ!」
足がもつれて、地面にズザァァァッとスライディング!
ヒザには、すり傷ができちゃってる。
いたたたた……。こんなにハデに転んだの、何年ぶり?
っていうか、今のわたし、すごーくみっともない気がする。
魔法使えないし、運動神経悪いし、すごい勢いでコケたし。
こんなへっぽこ魔法少女(?)、他にいるのでしょうか……!?
「だいじょうぶなのです……?」
ヒマリちゃんが、ツインテールをゆらしながら飛んできた。
「だっ、だいじょぶデス!!」
わたし、あわてて立ち上がる。
小さな傷くらい、なんてことないよ!
それよりも、だれも戦いに巻きこみたくないもん!
「それならよかったのです!」
ヒマリちゃんが、太陽みたいに笑ったのも束の間。
ビュオォォッ!
すっごく強い風。
うわぁぁっ、飛ばされる〜っ!
妖精さんたちが、わたしの肩につかまった。
まさかこれも、怪人さんの攻撃!?
髪をバサバサなびかせながら、飛ばされないよう足に力を入れて——ふと、気づいた。
あれ。痛く、ない……?
いや、ヒザは超痛いんだけど!
怪人さんの攻撃、全然痛くないんだ。
風が強いだけ。
逃げるのに必死で、ぜんぜん気づかなかった。
だったら、このまま放っておいても——。
いやっ、ダメだ! それだと桜が散っちゃうよ!!
とにかく、まずは風をなんとかしないと。なにか防げるものないかな?
わたし、カバンをガサゴソ。
うえぇっ、周りがピンクで見づらいっ! 桜吹雪はもっときれいなのがいいよっ!
文句を言いながら、あるものを探して……よしっ、見つけた!
「怪人さんっ!」
わたし、カバンを片手に仁王立ち。
「な、なにするつもり?」
肩につかまったツユくんが、心配そうな声をあげる。
フッフッフ……秘密兵器だよっ!
手に持った、ピンクのかわいい棒?
これを、風向きに向ける!
「必殺――」
いくよっ、怪人さん!
「折りたたみ傘っ!!」
そう言って、バサッと一気に傘を開く!
「!?」
もちろん、技名の通り折りたたみ傘。これで風を防げるはず!!
「魔法じゃないんだね〜」
ツユくんが、ボソッとつぶやいた。
うぅっ、風が強いっ!
これ以上勢いがすごくなったら、傘壊れちゃうんじゃないかな!? いやだよっ、これお気に入りなのに!!
他にも最悪の事態を想像して……お、オソロシイ!
風、早く止めてもらわないと!
……どうすれば?
今気づいたけど。
わたし、傘で防ぐことしかできなくない!?
魔法もダメ。多分、物理攻撃もダメ。
着替えただけで、なんにもできない。
うえぇっ、どうしよう……話し合い?
それができたら苦労しないんだけど……。
怪人さんの姿は、桜吹雪で見えない。
隙を見て何回か話しかけてみたけど、聞く耳を持ってくれないんだ。
怪人さん側で、他に話し合えそうな子っていえば……さっきの白髪の男の子くらい?
でもその子帰っちゃったよ!
なにか、他に解決方法は……。
今までにないくらい、頭をフル回転させてみる。
ええと……怪人さん達って、確かクリスタルをねらってるんだったっけ。
さっきも「わたせー!」っておどしたり、無理やり取り上げようとしたり。
そこまでするってことは、なんかすごい力があるのかも?
傘を持つ手に、グッと力が入った。
確か……変身した時って、クリスタルを使ったよね。
わたし、「フラワークリスタル!」ってさけんだもん。
……じゃあ、まさか。
思わずひゅっと息を飲んだ。
魔法の力があるのって、ステッキじゃなくてクリスタル……?
こわごわと、クリスタルを手に取ってみる。
すると、キラッと一瞬光った気がした。まるで、「そうだよ」って言ってくれてるみたいに。
なんとかできる……かな。
……うん、やってみよう!
クリスタルを、ぎゅっとにぎりしめた。
——おねがいします、力をかしてくださいっ!
おねがいに答えてくれるかのように、クリスタルさんが輝き始める!
「清らかな心にな〜れっ!」
またたく間にステッキから光が!
まわりが、だんだんキラキラしていく……!
「マジカル・ジプソフィラ!」
頭に浮かんだ、魔法の呪文。
さけぶと同時に、真っ白な光が怪人さんをつつみこんだ。ふわっふわの、わた雲みたい……!
きれいで優しい、お花の魔法。
思わずうっとり見とれちゃう。
いつの間にか、光が消えて——気がつくと、怪人さんもいなくなっていた。
まるで、最初からなにもなかったみたいに。
——わたしが、やったの……?
今、なんだかほわほわしてるんだ。
信じられなくて、ちょっとぼんやりしちゃってるのかな。
わたし、魔法、使えた……?
ほわ〜っとしてたら、空がキラッと光ったことに気づいた。
うえぇっ、光が降ってくるっ!?
どうすればいいかわからなくて、一人であわあわ。
すると……流れ星みたいなそれは、わたしの近くでふわっと止まった。
ふよふよ浮いてる、宝石に似ているナニカ。
キラキラで、きれい。
これ、もしかしてクリスタル……!?
よくわからないけど、二つに増えちゃった。
「すごいのですっ」
ヒマリちゃんが、うれしそうな声を上げた。
……って、うぇっ!?
おめめキラキラでわたしを見てる!?
「助けてくれてありがとうなのです!」
「いっ、いえっ! わたし、勝手に首つっこんじゃっただけなのでっ」
あわてて両手を振って否定。
だって、そんな大したものじゃないからっ。
魔法とかも全部偶然っ、クリスタルのおかげだしっ。
「そんなことないよ〜。ありがとう」
つ、ツユくんまで……!
そんなニコニコで見つめられると恥ずかしいっ。
でも、すっごく嬉しい!
心の中に、あたたかい気持ちがじんわり広がっていく。
「ほんとにね。ヒーラーさん、優しい人でよかったね」
「なのです! クリスタル、守ってくれたのです!」
ツユくんの言葉に、ヒマリちゃんは強くうなずいた。
「……あ! じゃあ、『ヒーラーが危険』っていうのはウソなのです?」
——ん?
聞こえた言葉に、心の温度がスっと冷えた。
いやいや、聞き間違い——。
「ちょっとヒマリ。『ヒーラーが危険』っていうのはヒミツでしょ」
……え?
わたし、目をぱちくり。
今、なんだか不穏な言葉が聞こえた気がする。
き、きけん……?
「だいじょうぶ、このヒーラーさんはいい人だと思うよ。……って、あれ? ヒーラーさん?」
ツユくん、わたしの前で手をヒラヒラ。
でも、わたしの頭はそれどころじゃない。
顔からサッと血の気が引いていった。
——ヒーラーは危険。
今、二人ともそう言ってた。聞いちゃった。
わたし、さっき「フラワーヒーラー!」って名乗ったよね。
じゃあ、まさか。
その危険だっていうのは——。
「わっ、わたし……!?」
白羽かすみ、ふつうの中学一年生。
だったはずが、とんでもないものになっちゃった——!?
さけんだ瞬間、ぱぁっとクリスタルが光り出す!
「カスミソウ!」
うえぇっ、口が勝手に動くよっ!
わけもわからず気づいたら、まわりが真っ白空間に。
——ここ、どこ!?
さっきまで公園にいたはずじゃ、
困惑している間にも、フシギ空間は変わっていく。
光の地面に、カスミソウが!
どんどん咲き乱れていく……!
ほんのりと、甘い香りにつつまれて——。
わたしのお洋服、真っ白ワンピになっちゃった!
——なっ、なにっ!? 制服はっ!?
わけもわからず混乱中。
でも、それだけでは終わらなかった!
わたしのまわりに、カスミソウ畑。その一輪一輪から、ぽわっと光が飛び出した!
シャボン玉みたいな、たくさんのぽわぽわ。集まって、だんだんリボンを形作っていく……!
ヒラヒラリボンに、たくさんのフリル。
パニエがふわっと、宝石がキラッと。
お花の力で、どんどん飾り付けられていく。
白いコーデに、パステルピンクのデコレーション!
——かわいいっ! お花のおひめさまみたい!
さっきまでの、シンプル真っ白ワンピース。
それがたちまち、ふわふわキラキラに大変身!
頭の上がピカッと光る。
カスミソウのカチューシャ!
ふわふわ降ってきたカチューシャが、ティアラみたいにちょこんとのっかる。
同時に、お下げだった髪がスルスルスルっとほどかれて——。
ふわっと髪が伸びちゃった!
こんなに長いの、初めて……!
感動してる間にも、キラキラなにかが飛んでくる!
——ステッキ!
流れ星みたいなそれを、パシッとつかんだ。
胸の中、じんわりとあったかい感じが広がっていく……!
「フラワーヒーラー・カスミソウ! あなたに幸福が訪れますように!」
そう言って、わたしはにっこりほほえんだ。
……。
…………!?
フラワーヒーラーって、なに!?
――という感じで、冒頭のシーンにつながるわけです。
よくわからないけど、変身しちゃったっ。
ロングヘアに、かわいいドレス。
さっきまでの制服とは、似ても似つかない姿。
わたしのまわりも、いつの間にか公園にもどってる。
妖精さんたち、白髪の子、怪人さんもいる。
これは一体、どういう状況……?
「「フラワーヒーラー!?」」
すると、二人の妖精さんが同時におどろきの声をもらした。
「あっ、あのっ、なにか知ってるんですかっ!?」
すると、ヒマリちゃんが、おびえるようにツインテールをゆらした。
「あ〜……」
ツユくんも、言い淀んで目をふせる。
「うん。名前だけね〜……」
そっか、名前だけ、か……。
怪人さんたちなら知ってるかな。
と、二人のほうに目をやると——。
白髪の子は、目をまんまるに見開いていた。怪人さんも直立不動。全く動かない。
特に男の子、すごーくびっくりしてるみたい。
——あ、あれ……?
まさかみんな、なにも知らない……!?
わけのわからない現象に、しーん……と沈黙が訪れた。
——ちょっとまって、整理しよう!
フラワーヒーラーっていう、ナゾの存在。
それって多分、魔法少女……だよね?
だって変身しちゃったし、ステッキだって持ってるもん。これで魔法を使うんだよ、多分!
怪人だって目の前にいるし、わたしが戦えばいいってことだよね!
――いやっ、ムリムリムリっ!!
あんなのと戦うなんて、怖すぎるよっ!!
なんとかして、平和に解決できないかな……?
むむ〜っと考えこんでいたら、
「桜怪人、ここは任せた」
男の子、どこかへ向かって歩きだした。
えっ、帰っちゃう……!?
って、待って! まずは話し合いをっ!!
……引き止める間もなく、男の子はワープホール(!?)を作って消えてしまった。
そんなぁ……。
で、でも、怪人さんは残ってるもんね!
勇気を出して、話しかけてみよう……!
「あのっ、怪人さん、」
……。
話しかけてみたけど、反応ナシ。
「……あっ、あなたの目的はなんですかっ?」
怪人さん、フリーズ。気をつけの姿勢で動きません。
ええと……どうしたんだろう。
読みこみエラー……とか?
「もっ、もしもーし?」
怪人さんの目の前で、手をひらひら。
やっぱり、反応は無——。
「ウガーッ!!」
「いやーっ!!」
怪人さんが動き出したっ!
わたし、怖くて思わずその場から逃走!!
……全力疾走のはずなのに、またもや足がカメさん。
こっ、こういうのって、走るの速くなるんじゃないの!?
走りながら、ゼェハァいってる。
うわぁぁぁ、もうムリだよぉ……。
すると突然、ビュオォォォッと強い風が吹いた。
一緒に、ピンクの花びらがぶわぁぁぁっと舞う。
これっ、桜吹雪!? うえぇっ、なにも見えないよっ!
まさか、怪人さんの攻撃とか……?
向こうは戦う気満々ってこと!?
ど、どうしよう……。
わたし、半分涙目。
話し合いするのはダメそう、だよね。
だったら——もう戦うしかない、ってこと……!?
ごくりとつばを飲み込んだ。
戦うの、すごく怖いけど。
ステッキ、持ってる。
わたしにしか、解決できない……。
えーい! もうヤケクソだっ!!
「なんか出ろーっ!!」
ステッキを思いっきり振ってみる。
これで、怪人さんにダメージを……!
……。
……あれ?
桜吹雪、止まない。
ステッキ、なにも出ない。
状況、変わってない。
——なんで!?
変身したら、魔法使えるんじゃないの!?
試しにもっと振ってみる。うでが取れちゃいそうなくらい、ブンブンブン!
……ウソでしょ。
何度振っても、なにも出ない。
うんともすんとも言わないよっ!!
ということは——ただ、コスプレしただけ?
着替えただけの一般人が、怪人さんに勝てるわけない。
逃げなきゃ……!
走り出そうとした、その時。
「わっ!」
足がもつれて、地面にズザァァァッとスライディング!
ヒザには、すり傷ができちゃってる。
いたたたた……。こんなにハデに転んだの、何年ぶり?
っていうか、今のわたし、すごーくみっともない気がする。
魔法使えないし、運動神経悪いし、すごい勢いでコケたし。
こんなへっぽこ魔法少女(?)、他にいるのでしょうか……!?
「だいじょうぶなのです……?」
ヒマリちゃんが、ツインテールをゆらしながら飛んできた。
「だっ、だいじょぶデス!!」
わたし、あわてて立ち上がる。
小さな傷くらい、なんてことないよ!
それよりも、だれも戦いに巻きこみたくないもん!
「それならよかったのです!」
ヒマリちゃんが、太陽みたいに笑ったのも束の間。
ビュオォォッ!
すっごく強い風。
うわぁぁっ、飛ばされる〜っ!
妖精さんたちが、わたしの肩につかまった。
まさかこれも、怪人さんの攻撃!?
髪をバサバサなびかせながら、飛ばされないよう足に力を入れて——ふと、気づいた。
あれ。痛く、ない……?
いや、ヒザは超痛いんだけど!
怪人さんの攻撃、全然痛くないんだ。
風が強いだけ。
逃げるのに必死で、ぜんぜん気づかなかった。
だったら、このまま放っておいても——。
いやっ、ダメだ! それだと桜が散っちゃうよ!!
とにかく、まずは風をなんとかしないと。なにか防げるものないかな?
わたし、カバンをガサゴソ。
うえぇっ、周りがピンクで見づらいっ! 桜吹雪はもっときれいなのがいいよっ!
文句を言いながら、あるものを探して……よしっ、見つけた!
「怪人さんっ!」
わたし、カバンを片手に仁王立ち。
「な、なにするつもり?」
肩につかまったツユくんが、心配そうな声をあげる。
フッフッフ……秘密兵器だよっ!
手に持った、ピンクのかわいい棒?
これを、風向きに向ける!
「必殺――」
いくよっ、怪人さん!
「折りたたみ傘っ!!」
そう言って、バサッと一気に傘を開く!
「!?」
もちろん、技名の通り折りたたみ傘。これで風を防げるはず!!
「魔法じゃないんだね〜」
ツユくんが、ボソッとつぶやいた。
うぅっ、風が強いっ!
これ以上勢いがすごくなったら、傘壊れちゃうんじゃないかな!? いやだよっ、これお気に入りなのに!!
他にも最悪の事態を想像して……お、オソロシイ!
風、早く止めてもらわないと!
……どうすれば?
今気づいたけど。
わたし、傘で防ぐことしかできなくない!?
魔法もダメ。多分、物理攻撃もダメ。
着替えただけで、なんにもできない。
うえぇっ、どうしよう……話し合い?
それができたら苦労しないんだけど……。
怪人さんの姿は、桜吹雪で見えない。
隙を見て何回か話しかけてみたけど、聞く耳を持ってくれないんだ。
怪人さん側で、他に話し合えそうな子っていえば……さっきの白髪の男の子くらい?
でもその子帰っちゃったよ!
なにか、他に解決方法は……。
今までにないくらい、頭をフル回転させてみる。
ええと……怪人さん達って、確かクリスタルをねらってるんだったっけ。
さっきも「わたせー!」っておどしたり、無理やり取り上げようとしたり。
そこまでするってことは、なんかすごい力があるのかも?
傘を持つ手に、グッと力が入った。
確か……変身した時って、クリスタルを使ったよね。
わたし、「フラワークリスタル!」ってさけんだもん。
……じゃあ、まさか。
思わずひゅっと息を飲んだ。
魔法の力があるのって、ステッキじゃなくてクリスタル……?
こわごわと、クリスタルを手に取ってみる。
すると、キラッと一瞬光った気がした。まるで、「そうだよ」って言ってくれてるみたいに。
なんとかできる……かな。
……うん、やってみよう!
クリスタルを、ぎゅっとにぎりしめた。
——おねがいします、力をかしてくださいっ!
おねがいに答えてくれるかのように、クリスタルさんが輝き始める!
「清らかな心にな〜れっ!」
またたく間にステッキから光が!
まわりが、だんだんキラキラしていく……!
「マジカル・ジプソフィラ!」
頭に浮かんだ、魔法の呪文。
さけぶと同時に、真っ白な光が怪人さんをつつみこんだ。ふわっふわの、わた雲みたい……!
きれいで優しい、お花の魔法。
思わずうっとり見とれちゃう。
いつの間にか、光が消えて——気がつくと、怪人さんもいなくなっていた。
まるで、最初からなにもなかったみたいに。
——わたしが、やったの……?
今、なんだかほわほわしてるんだ。
信じられなくて、ちょっとぼんやりしちゃってるのかな。
わたし、魔法、使えた……?
ほわ〜っとしてたら、空がキラッと光ったことに気づいた。
うえぇっ、光が降ってくるっ!?
どうすればいいかわからなくて、一人であわあわ。
すると……流れ星みたいなそれは、わたしの近くでふわっと止まった。
ふよふよ浮いてる、宝石に似ているナニカ。
キラキラで、きれい。
これ、もしかしてクリスタル……!?
よくわからないけど、二つに増えちゃった。
「すごいのですっ」
ヒマリちゃんが、うれしそうな声を上げた。
……って、うぇっ!?
おめめキラキラでわたしを見てる!?
「助けてくれてありがとうなのです!」
「いっ、いえっ! わたし、勝手に首つっこんじゃっただけなのでっ」
あわてて両手を振って否定。
だって、そんな大したものじゃないからっ。
魔法とかも全部偶然っ、クリスタルのおかげだしっ。
「そんなことないよ〜。ありがとう」
つ、ツユくんまで……!
そんなニコニコで見つめられると恥ずかしいっ。
でも、すっごく嬉しい!
心の中に、あたたかい気持ちがじんわり広がっていく。
「ほんとにね。ヒーラーさん、優しい人でよかったね」
「なのです! クリスタル、守ってくれたのです!」
ツユくんの言葉に、ヒマリちゃんは強くうなずいた。
「……あ! じゃあ、『ヒーラーが危険』っていうのはウソなのです?」
——ん?
聞こえた言葉に、心の温度がスっと冷えた。
いやいや、聞き間違い——。
「ちょっとヒマリ。『ヒーラーが危険』っていうのはヒミツでしょ」
……え?
わたし、目をぱちくり。
今、なんだか不穏な言葉が聞こえた気がする。
き、きけん……?
「だいじょうぶ、このヒーラーさんはいい人だと思うよ。……って、あれ? ヒーラーさん?」
ツユくん、わたしの前で手をヒラヒラ。
でも、わたしの頭はそれどころじゃない。
顔からサッと血の気が引いていった。
——ヒーラーは危険。
今、二人ともそう言ってた。聞いちゃった。
わたし、さっき「フラワーヒーラー!」って名乗ったよね。
じゃあ、まさか。
その危険だっていうのは——。
「わっ、わたし……!?」
白羽かすみ、ふつうの中学一年生。
だったはずが、とんでもないものになっちゃった——!?
