ハナコトバマジック!

「妖精さん、どこ行ったんだろ……」

 わたし、とぼとぼと帰宅中。
 ついて行こうとしたら、途中で見失っちゃったの。途中というか、追いかけてすぐだけど。
 はーぁ……。
 思わずガックリうなだれる。
 
 まぁ、ちょっとだけ思ってた。こうなるかなーってね。
 だってね、わたしの足、カメさんなんだよ。遅すぎて、なんにも追いつけないの。
  
 もう、あきらめないとかなぁ……。
 ここが絵本の世界だったら、妖精さんから話しかけてくれるんだろうけど。

 そもそも、見間違いだって可能性もあるよね。
 現実に妖精さんはいるわけない、か……。
 肩を落としながら、のろのろ歩いていると——。
  
「いやなのです!!」
 公園の近くを通ろうとしたら、なにやら大きな声が聞こえた。
 うえぇっ、なにっ? ケンカ?
 だいじょうぶかな……?

 そわそわしながら見てみたら。
 わたしの心臓、どきっとジャンプ!
 
 ——妖精さんっ!?
  
 見失ったはずの妖精さんが、公園に。
 オレンジツインテールの妖精さんっ!
 しかも……あれ? そのとなりに、妖精さんがもう一人!
 青い髪の男の子。遠目から見ても、小さくてかわいい!

 二人とも、なにか真剣に話してるみたい。
 こんなところで、なにしてるんだろう……?
 疑問に思っていると、二人の話し声が聞こえてきた。
  
「ヒマリだけでも、逃げて」
「ダメなのです! そしたら、ツユが……!」
 ヒマリちゃんと、ツユくん。これが二人のお名前なのかな。
 でも、あれ? 二人とも、なんだかけわしい顔をしてるけど……。
 
 気になって、目線の先をコソッとのぞいてみる。
 
「――!?」
  
 おどろいて、固まっちゃった。
 見たことを、すぐに後悔。
  
 なに、あれ。怪人……?
 ファンタジーの住人が、この世界にもう一人。
 ピンク色で、桜のお花みたいな顔をしてる。
 目が鬼みたいにつり上がってて……ちょっと怖い、かも。

 妖精さんのお友達……には、見えないよね。むしろ、二人と対立してる……?
  
「それ、渡して」
 急に、ひやっとした声がひびいた。
 声の主は、男の子。怪人のおとなりに立ってる。じゃあ……この子は怪人さん側?

 わたしと同じくらいの歳かな。
 雪みたいに、きれいな白髪。
 黒いマントをなびかせて、青い瞳で妖精さんを見つめてる。
 なんだか冷たそうだけど……表情からは、感情がよくわからない。
  
「クリスタル、渡して。何もしないから」
 無表情のその子は、妖精さんに一歩近づいた。
「だから、いやなのです!」
「そう。……でも、君たちも傷つきたくないでしょ」
 男の子が、また一歩詰めよった。表情は、人形みたいに変わらない。

 まさかだけど、おどしてる……? わたさなかったら傷つけてやるぞー! って。
 
 うーん……でも、なんだろう。この雰囲気、知ってる気がする。
 みなとくん、みたいな……。いやっ、そんなわけないよね。
 だって、みなとくんは優しいもん! だれかをおどすなんて、するわけない。幼なじみのわたしが一番知ってるよ!
  
「——ねぇ、アンタ。クリスタルをなにに使うつもりなの?」
 青髪の妖精さん(ツユくん?)が食い下がった。
  
 うぇっ? くりすたる、って……。
 男の子の目線をたどってみると、先にはツインテールの妖精さん(ヒマリちゃん?)が。
 なにか石みたいなものを、大事そうに持ってる。
 キラキラしていて、すっごくきれい!
 これが、クリスタル?
 
「——それは、」
「どうせ、悪いことに使うんじゃない?」
「なのです! 『なにもしない』って、絶対ウソなのです!」
 妖精さんたちが、口々に反対した。男の子は、なにか言いたげに唇をふるわせる。

 でも、すぐに口をつぐんで……ふっと、目をふせた。
 きれいなまつげの下で、瑠璃色の瞳がかすかにゆれる。
「……世界征服のためだよ」
 そう呟いた声は、少しふるえていたような気がした。なにかを、かくしてるみたいに。

 なんだろうって思ったけど。
 その子が顔を上げた時には、もう、仮面みたいな無表情にもどっていた。
  
「――桜怪人、クリスタルを奪って」
 冷たい声。
  
 なんで……「いやだ」って言ってるのに、無理やり取ろうとするの!?
 そういうの、よくないと思う……!!
 
 そう思った瞬間。
 ——ピカーっ!!
 突然、どこからか強い光が!

「わわぁっ」
 わたしのほうに、まぶしい光が飛んでくるっ!
 うえぇっ!? なにっ、ぶつかるっ!

「クリスタルが……!」
 妖精さんが、おどろきの声をもらした。
 クリスタルっ!?
 ちょ、ちょっとまって——!
 
 なにが起きたか考えるひまもなく、光が体をつつみこんでいった。