ハナコトバマジック!

「はぁぁぁ〜っ……」
 わたし、またしてもため息。しかも今回は、お花に向かって思いっきり。
 近くにはだれもいないし、ちょっとくらいならだいじょうぶ……だよね?
 
 ここは、学校の花壇。入学式の時に見つけた、お気に入りの場所なんだ。
 さっき想像したような、お花畑よりはこぢんまりしてるけど。
 静かで、すっごく居心地がいいんだよ!
 
 正門と反対のところにあるから、他の生徒はあんまり来ないみたい。
 遠くから、楽しそうな声がかすかに聞こえてくるくらい。

 この花壇に通っているのは、多分わたしだけ。
 そう考えると、ふふっと笑みがこぼれちゃった。
 ここが——わたしだけの、秘密の場所。
  
 気持ちいい……。
 風に乗って、ほんのりと甘い香りが鼻をくすぐる。
 たくさんのお花を見ていたら、なんだか心がぽかぽかしてきた。
 今日の失敗(事故紹介)も、大したことないって思えるような。

 もしかしてだけど……あの魔法使いさんも、こんな魔法を使ってたのかな。
 想像すると、つい口元がゆるんじゃう。
  
 ――あっ、魔法使いさんっていうのはね!
 お気に入りの絵本に出てくる、お花の魔法使いさんのこと。
 見た人が笑顔になっちゃうような、優しい魔法を使うんだよ!
 小さいころから、ずっとずーっと大好きなんだ。
  
「わたしも、魔法使いさんみたいになれたらなぁ……」
 ぽつりと、心の声がもれた。

 なーんてね。人見知りなわたしには、「だれかを笑顔にする」なんてムリだろうけど。
 魔法使いになれそうな人は、すっごくすっごく優しい人だと思う。それかきっと、勇気がある人だよね!
 
 例えば——みなとくん、とか。
 幼稚園のころのお話なんだけど。わたしが泣いていたときにね、ずーっと一緒にいてくれたんだ。
 その時のわたし、魔法がなくても笑顔になっちゃった。
 笑顔、かぁ。今のわたしとは大違いだ……。
 
 そろそろ帰ろうと立ち上がったら、パタパタと飛んでいるなにかが目に入ってきた。
 ちょうちょさんかなって思ったけど、それにしてはちょっと大きいような。

 あれっ、髪の毛……? オレンジのツインテールが、風になびいてる。
 ちょうちょさんって、こんな感じだったっけ……?
 おかしいと思ってよく見ると、小さな手に、足もある。
 人形が、飛んでる。
 いや、人……? それにしては小さいよね。
  
 ——もしかして。
 
「妖精さんっ!?」
 まっ、まって!
 
 急いでカバンをつかんで、全力ダッシュで追いかけた。