専属介護士ふみと撮る愛のシャッター

夜も更け、貞夫は自室で静かに眠りに落ちた。
残された愛斗とふみは、灯りを落とした部屋の中で寄り添い、柔らかく口づけを交わす。ふみは愛斗の体の上に身を重ね、額を彼の肩に預けた。
「愛斗くん、今日は本当にありがとう。いろいろと助かったわ」
「大したことじゃない、気にするな」
再び唇を重ねると、今度はふみの方から愛斗を抱き寄せ、二人は体を密着させたまま、安らかな眠りについた。
朝が来て日が昇ると、二人は目を覚ます。
ふみは台所に立って朝食の支度を始め、愛斗は貞夫の部屋へ向かって声をかけ、起き上がらせるとリビングへと連れてきた。
「おはよう、二人とも」
「おはようございます」
「おはよう」
ふみは手を動かしながら愛斗の方を見て柔らかく笑い、愛斗もまた彼女の笑顔に応えるように視線を返す。その隣で幸輝はテレビの画面に見入り、周りの様子にはまるで気づいていないかのように夢中になっていた。
料理が進むと、愛斗は後ろからふみの体を抱きしめ、顔を肩元に寄せる。しばらくそのまま温もりを分け合った後、「行ってくる」と声をかけ、歯医者へと出かけていった。
診察を終えた愛斗は、帰り道に新しくオープンした雑貨店へ立ち寄った。棚に並んだ商品の中に、ふみが好きそうな山の形をしたイヤリングを見つけると、迷わずレジへ向かって購入する。続いて和菓子屋に寄り、貞夫とふみのために手土産を選び、最後にコンビニで好みのお菓子をいくつか買い込んで家路についた。
帰宅すると、愛斗は和菓子の袋を開け、三人でテーブルを囲んで味わう。食事が済み、ふみが食器を洗い始めると、愛斗は再び彼女の背中から抱きつき、さりげなくエプロンのポケットへイヤリングの入った小さな袋を忍ばせると、何事もなかったように体を離した。
「もう、からかうのはやめて」
「わかったよ」
愛斗は冷蔵庫を開けて中を覗き、そのままふみの方を見つめる。
「どうしたの? 何かあるの?」
「いや、別に何でもない」
洗い物を終えたふみは、手を拭くためにエプロンのポケットへ手を入れると、何かが入っている感触に首を傾げる。取り出してみると可愛らしい包装の袋があり、中には「ふみへ いつもありがとう 愛斗より」と書かれた小さなメッセージカードが添えられていた。
ふみは驚きと嬉しさで顔を綻ばせ、すぐに愛斗の首に腕を回して抱きつく。
「ありがとう、開けてもいい?」
「もちろんだ」
袋を開けると、山の形をしたイヤリングが姿を見せた。
「まあ、可愛い……本当にありがとう」
二人は微笑み合いながら口づけを交わし、その後は貞夫の世話へと取りかかった。
夜が来て貞夫が眠りにつくと、静かな時間が訪れる。
次の朝、二人はリビングでコンビニで買ったカフェオレとお菓子を楽しんでいた。ふみは耳元を愛斗の前に差し出す。
「つけてくれたんだね」
「ああ、よく似合ってる」
再び柔らかいキスを交わし、愛斗はふみを優しく抱き寄せて愛を確かめ合った。
その後、ふみは支度を整えて仕事へと出かけ、愛斗は家に残って貞夫の介護と世話を続ける。夕方になる頃、ふみが帰宅すると、玄関まで出迎えた愛斗が彼女の荷物を受け取り、額にそっと口づける。
「おかえり、今日も一日お疲れさま」
「ただいま。少し疲れたけど、家に帰ってくると安心するわ」
リビングに入ると、貞夫は昼間の介護で落ち着き、椅子に座って静かにテレビの画面を眺めていた。ふみは軽く手を洗い、着替えを済ませると、台所へ立って夕食の準備を始める。愛斗はその間、貞夫の様子を見ながら、薬の時間や水分補給を確認して回る。
夕食が並ぶと、三人はテーブルを囲んで食事をとる。ふみは愛斗が選んでくれたイヤリングをつけたままで、明かりの下で小さな山の形が柔らかく光っているのを、愛斗は何度も嬉しそうに目で追っていた。
このイヤリング、本当に気に入ってるの?」
「ええ、愛斗くんが選んでくれたものだから、何よりも特別よ」
食後の後片付けを二人で分担し、貞夫を自室へと案内して寝かしつける。部屋の明かりを落とし、戸をそっと閉めると、ようやく二人だけの時間が訪れる。
リビングのソファに並んで腰を下ろし、愛斗はふみを自分の胸元へ引き寄せる。彼女はイヤリングが落ちないように少し首を傾げ、愛斗の首に腕を回して深く口づけを交わす。
「今日は歯医者も雑貨屋も回ってくれて、ありがとう。私のことまで考えてくれて……」
「お前が笑ってくれるのが、俺にとって一番のことだから」
柔らかい明かりの中、二人は抱き合ったまま一日の出来事を話し合い、時に笑い、時に頷き合う。温かいカフェオレをおかわりしながら、静かで穏やかな夜が更けていった。
その一方で、部屋の隅にある簡易ベッドでは、一日中誰からも声をかけられず、テレビを見る以外に何もすることのなかった幸輝が、ただ二人の幸せな時間を遠くから眺めるだけで、自分の存在がまるで空気のように扱われていることを、静かに噛み締めていた。