「どう……?初めて触ったクジラの感想は」
「……触ったことのない感触だった」
俺がそう答えると——。
「なにそれ」
ノアはクスリと笑って、少しだけ表情を和らげた。
ドキッ。
ノアを見た俺の心臓が一瞬だけ跳ね上がる。
「?蒼?」
俺は咄嗟に、ノアから顔を逸らしてしまった。
なんだ今の……?
心臓が跳ね上がる、この感覚は……。
感じたことのない感覚に、俺は戸惑いを覚えた。
「どうかした?」
ノアを見ると先ほどの微笑みは消え、いつもの無表情に戻っていた。
「……いや、なんでもない」
少し安堵しつつ、平常心を装う。
俺たちは遥か彼方にある水平線を見つめた。
「……今日の出来事も全部、私と蒼の二人だけの秘密ね」
「……わかった」
俺はそう言いながら、この美しい景色を目の奥に焼き付けていた。


