「海の中は綺麗なんだって。見てみたいけど、人間や機械は水の中では生きられないから……」
そう言って、遥か遠くの水平線を見つめるノア。
そして、ゆっくりと俺に振り返った。
「この子はね、私が歌うとよく会いに来てくれるの。水の中と陸の上だと、音は届かないはずなのに」
そう言いながら、浅瀬近くまで来ていたクジラに向かって歩き、その頭を撫でる。
「……撫でられるのか?」
「この子はおとなしいし、よく会いに来てくれるから慣れてるの」
……先ほどから、未知の光景ばかり目にする。
地球では、想像もできないような出来事ばかりだった。
「蒼もおいでよ」
そう言って、俺に手を差し伸べてきた。
俺はそれに惹かれるように足を踏み出す。
近くまで行くと、クジラは本当に大きかった。
「……触ってもいいのか?」
「うん」
ノアが頷き、俺はおそるおそる手を伸ばした。
ようやく触れることのできたクジラの肌はツルツルとしていたが、見た目よりも硬かった。


