色褪せて、着色して。Ⅷ~スノードロップ編~

 その夜は、あんまり眠れなかった。
 嬉しすぎると、こんなに眠れないものなのかと。
 ベッドの上で何度も寝返りを打った。

 ようやく寝つけて。
 朝、目覚めると。
 お決まりなわけで。
「太陽様は事務処理のため、出かけました」
「だよね~」
 と、私はバニラに言った。

 太陽様はほとんど家にいない。
 仕事があまりにも忙しくて。
 昨日、誰の邪魔も入らなかったのが奇跡といって良いのだと思う。

 ぼーと昨日の出来事を思い出したら。
 にこにこと笑ってしまう。
「ふふふ。今朝のマヒル様は特にお美しいですわ」
「え!? あ、ごめん。にやにやしちゃって。気持ち悪いよね」
 いかんいかんと顔をひきしめる。
 食後のお茶を飲んでいると。
 バニラが前に座った。
「マヒル様はそろそろ気持ちに正直になれましたか?」
「うえっ!?」
 急にバニラが変なことをいうものだから。
 げほげほとむせてしまった。

「わたくしはいつでも応援していますから」
「いや…その」
 自覚すると、顔に熱を帯びていくような感じがする。
 やっぱり、バニラはすべてをお見通しのようだ。
「妖精のわたくしでも太陽様の言動はなかなか、読みにくいものです」
「え? めちゃくちゃわかりやすい性格だと思うけど」
 すると、バニラは立ち上がって玄関のほうを見つめた。

「すいません。戻りましたあ~」

 私とバニラは顔を見合わせた。
 絶対に何か嫌な予感がした。