財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

「なあ」

優斗が珍しく口を開く。

六花が顔を上げる。

「もし嫌なこと言われたら」

優斗は少しだけ笑った。

「後で聞いてやるから」

六花は目を瞬かせた。

「愚痴でも何でも」

「......優斗」

「だから行ってこい」

その言葉は励ましだった。

不器用な。

優斗らしい励ましだった。

六花は小さく息を吐く。

行きたくない気持ちは変わらない。

それでも逃げられないことも分かっていた。

父が呼んでいる。

それは西園寺家では絶対だった。

六花はゆっくり立ち上がる。

そしてスカートを整えた。

まるで処刑台へ向かう人みたいだな。

ふとそんなことを思う。

すると優斗が苦笑した。

「そんな顔するなよ」

「どんな顔?」

「世界の終わりみたいな顔」

六花は少しだけ笑った。

本当に少しだけ。

そして二人は部屋を出る。

廊下の先には西園寺財閥会長である裕作の書斎がある。

重厚な扉。

その向こうにいる父親を思うだけで胃が痛くなった。

けれど。

隣には優斗がいた。

だからほんの少しだけ勇気が出た。