六花は話し終えると期待するような目で私を見る。
明らかに同意を求めていた。
つまり、
「玲央兄様は酷いです!」
「そうだな」
という流れを期待している。
しかし、俺は少し考えた後、正直に答えた。
「でも」
六花の表情が固まる。
俺は続けた。
「俺に電話をかけてきても、たぶん行かせなかったと思うぞ」
沈黙。
数秒の沈黙。
そして。
「え?」
六花が信じられないものを見る目をした。
私は当然のように頷く。
「だってファミレスだろう?」
「そうですけど」
「可愛い六花の味覚が狂っちゃうだろうし」
「狂いません」
即答だった。
俺は構わず続ける。
「それに、そんな平民だらけの場所に行ったら心配で心配で仕方ないしね」
六花の肩が少しずつ下がっていく。
期待が崩れていく音が聞こえる気がした。
俺は内心で少しだけ申し訳なく思ったが、本音なのだから仕方ない。
六花は世間知らずだ。
人を疑わない。
優しい。
そして何より可愛い。
そんな子を不特定多数の人間が集まる場所へ放り込むなど、兄として正気の沙汰ではない。
少なくとも俺には無理だった。
六花は小さくため息を吐いた。
完全に呆れた顔である。
だが俺は気にしない。
むしろ別の解決策を考えていた。
「そんなにレストランに行きたいなら」
六花が顔を上げる。
俺は微笑んだ。
「今度の休日、俺が連れて行ってあげるよ」
「……どこへですか」
「麻布のル・プーレ」
六花が首を傾げる。
知らないらしい。
俺は少し得意げになる。
「グランメゾンだ」
「フレンチなのですね」
「美味しいらしいぞ」
「誰情報ですか」
「九条」
六花は納得したような顔をした。
九条聡。
紫苑兄様の小学校からの親友であり、金融業界を牛耳る九条家の御曹司。
味覚に関してはかなり信用できる。
「この間も絶賛してたからな」
俺はソファに腰を下ろした。
「六花も気に入ると思う」
六花は何とも言えない顔をしていた。
恐らくファミレスとグランメゾンは違うと言いたいのだろう。
だが俺にはよく分からなかった。
レストランへ行きたい。
だからもっと良いレストランへ連れて行く。
何も問題はない。
完璧な解決策だと思う。
ところが六花は再びため息を吐いた。
俺は首を傾げる。
なぜだろう。
玲央ならともかく、俺はかなり譲歩したつもりだったのだが。
女心というのは難しい。
そんなことを考えながら、俺は紅茶を一口飲んだ。
そして心の中でひっそりと思う。
今度の休日はなんとしてでも予定を空けておこう。
せっかく可愛い可愛い可愛すぎる六花と食事ができるのだから。
【side 紫苑 fin 】
明らかに同意を求めていた。
つまり、
「玲央兄様は酷いです!」
「そうだな」
という流れを期待している。
しかし、俺は少し考えた後、正直に答えた。
「でも」
六花の表情が固まる。
俺は続けた。
「俺に電話をかけてきても、たぶん行かせなかったと思うぞ」
沈黙。
数秒の沈黙。
そして。
「え?」
六花が信じられないものを見る目をした。
私は当然のように頷く。
「だってファミレスだろう?」
「そうですけど」
「可愛い六花の味覚が狂っちゃうだろうし」
「狂いません」
即答だった。
俺は構わず続ける。
「それに、そんな平民だらけの場所に行ったら心配で心配で仕方ないしね」
六花の肩が少しずつ下がっていく。
期待が崩れていく音が聞こえる気がした。
俺は内心で少しだけ申し訳なく思ったが、本音なのだから仕方ない。
六花は世間知らずだ。
人を疑わない。
優しい。
そして何より可愛い。
そんな子を不特定多数の人間が集まる場所へ放り込むなど、兄として正気の沙汰ではない。
少なくとも俺には無理だった。
六花は小さくため息を吐いた。
完全に呆れた顔である。
だが俺は気にしない。
むしろ別の解決策を考えていた。
「そんなにレストランに行きたいなら」
六花が顔を上げる。
俺は微笑んだ。
「今度の休日、俺が連れて行ってあげるよ」
「……どこへですか」
「麻布のル・プーレ」
六花が首を傾げる。
知らないらしい。
俺は少し得意げになる。
「グランメゾンだ」
「フレンチなのですね」
「美味しいらしいぞ」
「誰情報ですか」
「九条」
六花は納得したような顔をした。
九条聡。
紫苑兄様の小学校からの親友であり、金融業界を牛耳る九条家の御曹司。
味覚に関してはかなり信用できる。
「この間も絶賛してたからな」
俺はソファに腰を下ろした。
「六花も気に入ると思う」
六花は何とも言えない顔をしていた。
恐らくファミレスとグランメゾンは違うと言いたいのだろう。
だが俺にはよく分からなかった。
レストランへ行きたい。
だからもっと良いレストランへ連れて行く。
何も問題はない。
完璧な解決策だと思う。
ところが六花は再びため息を吐いた。
俺は首を傾げる。
なぜだろう。
玲央ならともかく、俺はかなり譲歩したつもりだったのだが。
女心というのは難しい。
そんなことを考えながら、俺は紅茶を一口飲んだ。
そして心の中でひっそりと思う。
今度の休日はなんとしてでも予定を空けておこう。
せっかく可愛い可愛い可愛すぎる六花と食事ができるのだから。
【side 紫苑 fin 】
