夏休み初日の朝、私は少しだけ緊張しながら道明寺家のリムジンを降りた。
前回のGWは「花嫁候補」として送り込まれたこともあり、私は終始肩に力が入っていたし、三つ子の皆様も私を歓迎しているとは言い難い態度だったため、正直なところ今回も少し身構えていた。
けれど。
「おう。」
玄関前で最初に声をかけてきた翼様は、以前のような冷たい目ではなく、どこか自然な表情をしていた。
「お久しぶりです。」
私が頭を下げると、翼様は小さく頷く。
「まあ、何回も会ってるしな。」
その言葉に少しだけ胸が温かくなった。
すると後ろから蓮様が現れる。
「六花ちゃん、また来たんだ。」
「来ました。」
「前より荷物多くない?」
「夏休みですから。」
「なるほど。」
蓮様は楽しそうに笑った。
さらに碧様も姿を見せる。
「久しぶり。」
「お久しぶりです。」
「また一緒に遊ぼーね。」
「はい。」
気が付けば、GWの時とは比べ物にならないほど自然に会話ができるようになっていた。
そんな様子を見ていた雅臣様は満足そうに頷く。
「うんうん。」
嫌な予感がした。
「せっかくだから今日は四人で出掛けてきなさい。」
やっぱり。
「えっ。」
「ちょうどいい機会だろう。」
雅臣様は笑顔だった。
だが。
その笑顔には逆らえない圧があった。
そして昼過ぎ。
私たちはリムジンで海沿いを走っていた。
「それで。」
翼様が聞く。
「行きたい場所あるのか?」
私は一瞬躊躇った。
バカにされるかも。
玲央兄様や紫苑兄様みたいに却下するかも。
と、思ったからである。
だが、ここで言わなければ多分私は一生ファミレスに行かない。
「あります。」
三人がこちらを見る。
私は深呼吸した。
「ファミレスです。」
沈黙。
「っぽい。」
蓮様が笑う。
「確かに六花っぽい。」
碧様も笑う。
「そこまでして行きたい理由あるの?」
私は大きく頷いた。
「陽菜との約束なんです。」
「陽菜?」
「学校のお友達です。」
「へぇ。」
「アルバイトをしているお店なんです。」
翼様は少し考えたあと、
「じゃあ行くか。」
とあっさり言った。
私は思わず目を見開いた。
「本当ですか!?」
「そんな驚くことか?」
「驚きます!」
「そんなに嬉しい?」
「すごく嬉しいです!」
私が思わず身を乗り出すと、三人とも笑っていた。
そして。
ついに。
私は人生初のファミレスへ到着した。
店内へ入った瞬間。
私は感動していた。
本当に。
感動していた。
「人がたくさん……」
「昼時だからな」
「ドリンクバーがあります!」
「あるね。」
「デザートもたくさんあります!」
「あるね。」
蓮様が笑いを堪えている。
碧様も肩を震わせていた。
そんな時だった。
「えっ!?」
聞き覚えのある声。
振り向く。
そこにはお店の制服姿の陽菜が立っていた。
数秒。
陽菜は固まる。
そして。
私を見る。
次に。
翼様を見る。
蓮様を見る。
碧様を見る。
また私を見る。
「六花。」
「はい。」
「何その状況。」
「え?」
「なんでイケメン三人連れてるの?」
私は首を傾げた。
「道明寺様たちです。」
「だからどうして!」
陽菜は頭を抱えた。
「何これ!?」
「何がですか?」
「少女漫画!?」
店内の女子高生たちもちらちらこちらを見ている。
それもそのはずだった。
翼様も蓮様も碧様も目立つ。
とても目立つ。
「陽菜!」
私は思わず駆け寄った。
「約束守れたよ!」
「うん、それはいいんだけどさ!」
陽菜は私の肩を掴む。
「どうしてそんなイケメン軍団引き連れてるの!?」
「イケメン軍団……?花嫁修行なの。」
「意味が分からない。」
私は思わず笑った。
「ふふっ。」
「笑い事じゃないって!」
「陽菜面白いわ。」
「六花!」
「ごめんなさい。」
その瞬間だった。
後ろで。
三つ子が同時に固まっていた。
翼。
(六花ってタメ口使えたのか。)
蓮。
(普通に友達と喋れるじゃん。)
碧。
(敬語しか話せない平安貴族の生き残りかと思ってた。)
三人とも同じようなことを考えていた。
なぜなら。
今までの六花は、
「翼様」
「蓮様」
「碧様」
と、いつも丁寧な敬語だったからだ。
ところが。
陽菜と話している六花はまるで別人だった。
年相応の女子高生。
楽しそうに笑い。
冗談を言い。
友達と騒いでいる。
そんな自然な姿を。
三人は初めて見たのだった。
前回のGWは「花嫁候補」として送り込まれたこともあり、私は終始肩に力が入っていたし、三つ子の皆様も私を歓迎しているとは言い難い態度だったため、正直なところ今回も少し身構えていた。
けれど。
「おう。」
玄関前で最初に声をかけてきた翼様は、以前のような冷たい目ではなく、どこか自然な表情をしていた。
「お久しぶりです。」
私が頭を下げると、翼様は小さく頷く。
「まあ、何回も会ってるしな。」
その言葉に少しだけ胸が温かくなった。
すると後ろから蓮様が現れる。
「六花ちゃん、また来たんだ。」
「来ました。」
「前より荷物多くない?」
「夏休みですから。」
「なるほど。」
蓮様は楽しそうに笑った。
さらに碧様も姿を見せる。
「久しぶり。」
「お久しぶりです。」
「また一緒に遊ぼーね。」
「はい。」
気が付けば、GWの時とは比べ物にならないほど自然に会話ができるようになっていた。
そんな様子を見ていた雅臣様は満足そうに頷く。
「うんうん。」
嫌な予感がした。
「せっかくだから今日は四人で出掛けてきなさい。」
やっぱり。
「えっ。」
「ちょうどいい機会だろう。」
雅臣様は笑顔だった。
だが。
その笑顔には逆らえない圧があった。
そして昼過ぎ。
私たちはリムジンで海沿いを走っていた。
「それで。」
翼様が聞く。
「行きたい場所あるのか?」
私は一瞬躊躇った。
バカにされるかも。
玲央兄様や紫苑兄様みたいに却下するかも。
と、思ったからである。
だが、ここで言わなければ多分私は一生ファミレスに行かない。
「あります。」
三人がこちらを見る。
私は深呼吸した。
「ファミレスです。」
沈黙。
「っぽい。」
蓮様が笑う。
「確かに六花っぽい。」
碧様も笑う。
「そこまでして行きたい理由あるの?」
私は大きく頷いた。
「陽菜との約束なんです。」
「陽菜?」
「学校のお友達です。」
「へぇ。」
「アルバイトをしているお店なんです。」
翼様は少し考えたあと、
「じゃあ行くか。」
とあっさり言った。
私は思わず目を見開いた。
「本当ですか!?」
「そんな驚くことか?」
「驚きます!」
「そんなに嬉しい?」
「すごく嬉しいです!」
私が思わず身を乗り出すと、三人とも笑っていた。
そして。
ついに。
私は人生初のファミレスへ到着した。
店内へ入った瞬間。
私は感動していた。
本当に。
感動していた。
「人がたくさん……」
「昼時だからな」
「ドリンクバーがあります!」
「あるね。」
「デザートもたくさんあります!」
「あるね。」
蓮様が笑いを堪えている。
碧様も肩を震わせていた。
そんな時だった。
「えっ!?」
聞き覚えのある声。
振り向く。
そこにはお店の制服姿の陽菜が立っていた。
数秒。
陽菜は固まる。
そして。
私を見る。
次に。
翼様を見る。
蓮様を見る。
碧様を見る。
また私を見る。
「六花。」
「はい。」
「何その状況。」
「え?」
「なんでイケメン三人連れてるの?」
私は首を傾げた。
「道明寺様たちです。」
「だからどうして!」
陽菜は頭を抱えた。
「何これ!?」
「何がですか?」
「少女漫画!?」
店内の女子高生たちもちらちらこちらを見ている。
それもそのはずだった。
翼様も蓮様も碧様も目立つ。
とても目立つ。
「陽菜!」
私は思わず駆け寄った。
「約束守れたよ!」
「うん、それはいいんだけどさ!」
陽菜は私の肩を掴む。
「どうしてそんなイケメン軍団引き連れてるの!?」
「イケメン軍団……?花嫁修行なの。」
「意味が分からない。」
私は思わず笑った。
「ふふっ。」
「笑い事じゃないって!」
「陽菜面白いわ。」
「六花!」
「ごめんなさい。」
その瞬間だった。
後ろで。
三つ子が同時に固まっていた。
翼。
(六花ってタメ口使えたのか。)
蓮。
(普通に友達と喋れるじゃん。)
碧。
(敬語しか話せない平安貴族の生き残りかと思ってた。)
三人とも同じようなことを考えていた。
なぜなら。
今までの六花は、
「翼様」
「蓮様」
「碧様」
と、いつも丁寧な敬語だったからだ。
ところが。
陽菜と話している六花はまるで別人だった。
年相応の女子高生。
楽しそうに笑い。
冗談を言い。
友達と騒いでいる。
そんな自然な姿を。
三人は初めて見たのだった。
