財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて


金髪の少年は違った。

階段の途中で足を止め、

「え?」

と、小さく声を漏らす。

なぜか私を3度見した。

(聞いてた話と違うんだけど)

蓮は内心かなり驚いていた。

もっと高飛車なお嬢様を想像していたのだ。

ブランド品で武装したような。

見下してくるような。

そんな令嬢を。

しかし目の前にいる少女は違う。

緊張したように立っている。

どこか小動物みたいだ。

(可愛いじゃん)

蓮は思わずそう思った。

もちろん顔には出さない。

そして最後。

赤髪の碧はじっと六花を見つめた。

十秒。

二十秒。

三十秒。

全員が気まずくなった頃。

ようやくその口を開いた。

「小さい」

沈黙。

六花が瞬きをする。

蓮が吹き出す。

翼が額を押さえる。

「お前な……」

雅臣が呆れる。

碧は真顔だった。

「思ったより小さい」

「身長の話?」

蓮が聞く。

碧は首を傾げる。

「全部」

「何だよ全部って」

碧はそれ以上説明しなかった。

六花は何と返せばいいのか分からない。

すると雅臣が苦笑した。

「すまないね」

「い、いえ」

「碧は昔からこうなんだ」

その時。

黒髪の青年が六花の前へ歩み出る。

「道明寺翼だ」

短い自己紹介。

「西園寺六花と申します。よろしくお願い致します。」

「よろしく」


次に金髪の青年が近付いてくる。

「道明寺蓮」

にっと笑う。

「よろしく、お嬢様」


どこか人懐っこくて、初対面なのに距離が近い。

六花は少し戸惑いながらもお辞儀をした。

「よろしくお願い致します。」


そして最後に赤髪の青年。

しばらく六花を見つめた後、

ぽつりと呟いた。

「碧」

それだけだった。

「それ自己紹介?」

蓮が突っ込むが無視。

六花は思わず小さく笑ってしまう。

すると碧が初めて少しだけ目を見開いた。


どうやら笑われるとは思っていなかったらしい。

そんな三人の様子を見ながら、六花は少しだけ肩の力を抜いた。

昨夜までは恐ろしい場所へ送り込まれる気分だった。

けれど。

少なくとも今のところ、

目の前にいる三人は想像していたほど怖い人たちではなさそうだった。