【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

屋敷へ戻ると、私は思わず目を丸くした。

なぜなら。

普段ならまだ仕事中のはずの紫苑兄様と玲央兄様が、珍しく二人とも帰宅していたからだ。

「六花!」

玄関へ入った瞬間。

紫苑兄様が駆け寄ってくる。

本当に駆け寄ってきた。

二十五歳の大企業幹部が。

「お帰り。」

「ただいま帰りました。」

「あと何時間一緒にいられるかな。」

「まだ明日出発です。」

「短い。」

「十分長いです。」

紫苑兄様は本気で落ち込んでいた。

私は小さくため息を吐く。

すると。

「おいブス。」

今度は後ろから玲央兄様の声が飛んできた。

振り返る。

ソファに座った玲央兄様が足を組みながらこちらを見ていた。

「何ですか。」

「明日から道明寺行くんだろ。」

「はい。」

「向こうで余計なことすんなよ。」

「余計なこととは?」

「息してるだけで十分余計だから。」

「酷すぎません!?」

玲央兄様は鼻で笑う。

「道明寺の連中も可哀想だな。」

「どうしてですか。」

「毎日お前の面見なきゃいけないんだから。」

「玲央兄様!」

「感謝しろ。」

「意味が分かりません!」

そんな兄妹のやり取りを見ながら紫苑兄様が眉をひそめた。

「玲央。」

「何。」

「六花をいじめるな。」

「いじめてねぇよ。」

「十分いじめてる。」

「愛情表現だ。」

「歪みすぎてる。」

二人はまた言い争いを始める。

慣れたものだ。もうこうなったらスルーするのが最善策。