【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

夏休み前最後の終業式が終わった日の放課後、私は教室の窓から見える青空を眺めながら、胸の奥が少しだけそわそわしているのを感じていた。

明日から夏休み。

けれど普通の高校生が想像するような自由な夏休みではなく、私には道明寺家での花嫁修行という名目の滞在が待っているため、嬉しいような複雑なような何とも言えない気持ちだった。

「六花ー!」

帰り支度を終えた陽菜さんが元気よく駆け寄ってくる。

「夏休みだね!」

「そうですね。」

「で、約束覚えてる?」

私は思わず苦笑した。

もちろん覚えている。

むしろ忘れられるはずがない。

「ファミレスのことですよね。」

「そう!」

陽菜さんは嬉しそうに身を乗り出した。

「夏休み中に絶対来てよ!」

「はい。」

私は小さく頷く。

「今度こそ必ず行きます。」

前回は屋敷の運転手に連れ戻されてしまった。

あの日のことを思い出すと今でも少し悔しい。

「本当だよ?」

「本当です。」

「ドタキャン禁止!」

「しません。」

「お兄さん達に捕まるのも禁止!」

「それは私にはどうしようもありません!」

陽菜さんが声を上げて笑う。

私もつられて笑ってしまった。

そして心の中で密かに決意する。

今年の夏こそ。

絶対にファミレスへ行く。

今度こそ。

絶対に。

そんな決意を胸に私はリムジンへ乗り込んだ。