財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

そう思った瞬間。

「もし変な男に懐いたら連れて帰ればいいだろ」

撤回する。

全然まともではなかった。

「そうだな」

紫苑兄様が真顔で頷く。

「最悪それでいこう」

「いきません」

私も真顔で言った。

二人は揃って私を見る。

その目が怖い。

本気で言っている目だった。

私は静かにため息を吐く。

父は私を政略結婚の駒としてしか見ていない。

兄たちは過保護すぎて自由を与えてくれない。

まともな人はいないのだろうか。

そんなことを考えながら窓の外を見る。

そこには道明寺から来た迎えの車が停まっていた。

不安しかない。

それでも。

このまま屋敷の中で言われた通りに生きるだけよりは、少しだけマシかもしれない。

そんな予感もしていた。