財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

すると今度は紫苑兄様が深刻そうな顔で口を開いた。

「いや」

嫌な予感しかしない。

玲央兄様とは別方向で。

「俺は本当に心配なんだ」

始まった。

紫苑兄様は額を押さえる。

まるで世界の終わりでも来たような顔だった。

「あぁ……」

大袈裟である。

「帰ってきても六花がいないなら、もう屋敷に戻ってこなくてもいいかもしれない」

「戻ってきてください」

「仕事が終わっても六花がいないんだぞ」

「数日だけです」

「数日も」

「数日です」

紫苑兄様は本気で落ち込んでいた。

どうしてこうなるのだろう。

「しかも」

紫苑兄様は続ける。

「三匹の狼たちに六花を預けるなんて」

狼。

たぶん道明寺家の三つ子のことだろう。

まだ会ったこともない。

顔も知らない。

性格も知らない。

なのに。

「心配で心臓が破裂しそうだよ」

「破裂させないでください」

私は即答した。

紫苑兄様は聞いていない。

「もし六花が泣かされたらどうしよう」

「泣きません」

「騙されたら」

「騙されるってどういうことですか」

「誘拐されたら」

「誘拐じゃなくて花嫁修行です。自分から行くんです」

「それでも心配なんだ」

私は思わず天井を見上げた。

どうして紫苑兄様は賢い頭を今使えないのだろうか。

玲央兄様はそんな紫苑兄様を見ながら鼻で笑う。

「大袈裟なんだよ」

珍しくまともなことを言った。