財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

「お前はこのGWと夏休み、冬休みに道明寺家へ花嫁修行に行け。そして三人のうちの誰かを射止めてこい」

「はい」

私は思考がフリーズする前に、とにかく返事をした。この人の前ではそれが安全策。きちんと返事をしないと機嫌を損ねてしまう。

「誰を後取りにするかはまだ決めていないらしい」

「……」

「お前には結婚相手の選択肢を三つやると言っているんだ」

私は心の中で苦笑した。

三人の中から選べるのだから感謝しろとでも言いたいのだろうか。

私からすれば、

知らない男A。

知らない男B。

知らない男C。

その中から選べと言われているだけだった。

しかも、もし誰の心も掴めなかったら、どんな躾が待っているかわからないと言う無言の脅し付きの。

「西園寺の後ろ盾があれば、お前の夫になった者は後取りになるだろうしな」

父の声には満足げな響きがあった。

まるで優秀な投資案件でも見つけたかのようだった。


私は静かに父を見つめる。

そして思う。

今この人の目に映っているのは娘ではない。

西園寺家というブランド。

道明寺家との政略結婚。

後継者争い。

企業価値。

株価。

権力。

そういうものだけだ。

私は膝の上で拳を握った。

爪が掌に食い込む。

痛い。

でもその痛みの方が現実味があった。

十五年間。

ずっと籠の中で育てられてきた。

けれど今。

初めて気づいた気がした。

私の人生は籠の中ですらない。

最初からお父様の手の中にあったのだと。