財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

 どうせ嫁に出されるなら。

 金融の九条。

 海運の有栖川。

 政界の財前。

 あるいは道明寺。

 候補はその辺りだろうと思っていた。

 だから相手の家柄については納得できる。

 問題はそこではなかった。

 私は静かに父を見る。

 この人は本当に一度も聞かない。

 私がどうしたいのか。

 将来はどんな職業に就きたいのか。

 どんな未来を望んでいるのか。

 一度も。

 本当に一度も。

 聞いたことがない。

 なぜなら、最初から全てこの人が決めるから。

 父にとっての私は娘ではなく駒なのだ。

 西園寺家の繁栄のための。

 胸の奥が少しだけ冷えた。

 ああ。

 やっぱり。

 この人は私を道具としてしか見ていないのね。

 父は続ける。

 「だが、道明寺は息子が気に入った令嬢でないと結婚させないと言うんだ」

 驚いた。この世界では政略結婚が当たり前。家を裏切って恋愛結婚なんてしたら、一族から後ろ指をさされ、二度と顔を合わせることもできない。

 それなのに、息子の意思を考えてくれる財閥会長がいるだなんて。

 この人とは正反対。

 「道明寺家にはお前の一学年上で、三つ子の(つばさ)(れん)(あおい)がいる」

 三つ子。

 聞いたことがある。

 3人とも容姿端麗、頭脳明晰で仲が良いという噂だった。