財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

やがて書斎の前へ辿り着く。

 重厚なマホガニーの扉。

 幼い頃から何度も見てきた扉。

 それなのに今でも苦手だった。

 この向こうにはお父様がいる。

 私の人生を勝手に決める人が。

 優斗がノックをする。

 「お嬢様をお連れしました」

 すぐに低い声が返ってきた。

 「入れ」

 たった一言。

 それだけなのに胃が痛くなる。

 私は小さく息を吐き、覚悟を決めて扉を開いた。


 書斎の中は相変わらずだった。

 壁一面に並ぶ本棚。

 重厚な机。

 高級そうな革張りの椅子。

 そして窓際にはお父様──西園寺裕作が座っている。

 数か月ぶりに見るお父様の姿。

 けれど懐かしいという感情は湧いてこない。

 緊張と警戒心だけが胸を支配していた。

 後ろで扉が閉まる。

 優斗は廊下で待機だ。

 この部屋には私とお父様しかいない。

 それだけで息苦しかった。