【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

ランチを終えた後、私たちはショッピングモールの中をゆっくり歩いていた。

フードコートだけでも十分に新鮮だったのに、その後も私にとっては見るもの全てが珍しく、洋服屋さんや雑貨店、本屋さんやゲームセンターなど、今まで名前だけは知っていても実際に足を踏み入れたことのない場所ばかりだったため、気付けば私は何度も立ち止まっては辺りを見回してしまっていた。

後ろでは道明寺家の執事さんとボディーガードの方々が一定の距離を保ちながらついてきており、その様子は少し大袈裟な気もしたけれど、西園寺家でも似たようなものなので今さら気にすることでもない。



そんな中だった。



エスカレーター近くの通路を歩いていた時、ふと私の視界の端に二人の兄妹が映った。



お兄さんは私たちより少し年上くらいだろうか。

黒髪で、少し鋭い目つきをしている。



その隣には小学生くらいの女の子がいた。



二人は仲良さそうに話しながら歩いている。



本来ならそれだけの光景だった。



けれど。



私の視線は自然とその兄妹の服へ向かっていた。



男の子のパーカーは色褪せていた。



何度も洗濯を繰り返したのだろう。



袖口も少し擦り切れている。



そして隣の女の子。



その子の服は明らかにサイズが合っていなかった。



袖が長い。



肩幅も大きい。



おそらく誰かのお下がりなのだろう。



靴も少し古い。



私は思わず立ち止まりそうになった。



目が離せなかった。



なぜだろう。



西園寺家では見たことのない光景だった。



私の服は全て私専用に仕立てられる。



少しでもサイズが合わなくなれば新しいものが用意される。



それが当たり前だった。



だからこそ。



どうして。



どうしてあの子は。



あんなに大きな服を着ているのだろう。



どうして新しい服を買わないのだろう。



買えないのだろうか。



そんなことが本当にあるのだろうか。



気付けば小さく声が漏れていた。



「どうして……」



自分でも無意識だった。



けれど。



その言葉は静かな通路では思った以上にはっきり響いたらしい。



隣を歩いていた翼様がこちらを見る。



蓮様も。



碧様も。



三人とも私の視線の先を追う。



そして。



その先にいる兄妹を見た瞬間。



ほんの一瞬だけ。



三人の表情が変わったような気がした。



それは驚きでもなく。



戸惑いでもなく。



何かを隠そうとするような表情だった。



けれど私はその意味を知らない。



ただ。



あの兄妹から目が離せなかった。



特に。

女の子の少し大きすぎる服から。