財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

 【side 優斗】

 俺はため息を吐く六花をみて胸が痛んだ。

 六花は旦那様がお帰りになって、呼び出されるたびにこんな反応をするようになった。

 初等部の頃までは、「いやだっ!行きたくないっ」って、必死に抵抗していて、みかねた屋敷の執事長である俺の父が、半泣きの六花を抱き上げて旦那様の書斎に連れて行っていた。

 でも、中等部に上がった頃から、六花は諦めたように大人しく書斎に向かうようになった。

 あれほど嫌がっていたはずなのに。

 本当なら連れて行きたくないが、執事の分際では旦那様の命令に背くことはできない。

 大抵、六花が旦那様に呼び出されて書斎に行って1時間もすると、書斎から旦那様の怒鳴り声が聞こえてくる。

 メイドも執事も、怒鳴り声を聞いて六花のことを心配するが、みんな最終的には六花を救い出すことよりも旦那様の機嫌を損ねないことを優先させてしまう。

 そう、六花はみんなから見殺しにされているのだ。

 でも、たとえ旦那様に逆らうことはできなくても、俺だけは最後まで六花の味方でいたい。

 「なあ、もし嫌なこと言われたら、後で聞いてやるから」

 六花は大きなブラウンの瞳を瞬かせた。

 「愚痴でも何でも」

 「......優斗」

 「だから行ってこい」

 【side 優斗 fin 】