【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

俺は六花のその言葉を聞いた瞬間、

思わず箸を止めた。



「でも、イケメンアイドルの玲央兄様からしたら、私の顔なんて見たくもないほど醜いのかもしれません」

真顔だった。

冗談ではない。

本気で言っている。

「でも、直接ブスって言わなくてもいいじゃないですか!」

不満そうに頬を膨らませながらパスタを巻いている。

俺は蓮を見る。

蓮も碧も俺を見ている。

三人とも同じことを考えていた。



(いや、違うだろ)

玲央さんがそういう意味で言っているわけがない。

どう考えても違う。

まず前提がおかしい。

六花はめちゃくちゃ可愛い。

いや可愛いどころではない。

学校にいたら確実に目立つ。

街を歩いていても振り返られる。

芸能界にいても通用するレベルだと思う。

それを本人だけが理解していない。

蓮が呆れたように聞いた。

「お前さ」

「何ですか?」

「鏡見たことある?」

六花が首を傾げる。

「ありますけど」

「毎日?」

「毎日見ます」

「それでその結論になるの?」

「はい?」

話が噛み合わない。

俺は頭を抱えたくなった。

碧が珍しく口を開く。

「六花」

「はい」

「学校で告白されたことはあんの?」

「小学校からずっと女子校ですから、体育祭とか文化祭とか、近くの男子校と合同で行う行事の時だけですけど……」

「何回?」

六花は少し考えた。

「数えたことはありませんけど……何十回かは」

蓮が吹き出した。

「あるじゃねぇか!」

「でもそれは西園寺家だからです」

即答だった。

俺たちは固まる。



なるほど。



そういう思考回路か。



「違うだろ」



思わず言う。



「違いますか?」



「違う」



「違うね」

蓮も言う。



「違う」

碧も頷く。



三対一だった。



しかし六花は納得していない。



「でも皆さん、西園寺家の娘だから近付いてくるんです」



「全員が?」



「多分」



「何十人も?」



「はい」



俺は深いため息を吐いた。



これは重症だ。



かなり重症だ。



紫苑さんと玲央さん。



あの二人はたぶん、

六花を外の世界から守りすぎた。



その結果、

六花は自分の容姿を客観視できなくなっている。



普通なら気付く。



周囲の反応で。



告白の数で。



街を歩いた時の視線で。



だが六花は、

そういう経験を全部遮断された環境で育っている。



だから本気で分かっていない。



その時。



六花がぽつりと言った。



「そもそも私、西園寺家で一番顔が整っていませんし」



俺は顔を上げる。



「は?」



「玲央兄様も紫苑兄様もすごく綺麗ですから」



それは否定しない。



実際その二人は整っている。



かなり整っている。



しかし。



「だから比較すると私は普通です」



真顔だった。



本当にそう思っているらしい。



蓮がとうとう机に突っ伏した。



「ダメだこいつ」



碧も珍しく苦笑している。



俺も思わず笑ってしまった。



六花だけが困惑していた。



「なぜ笑うんですか?」



「いや」



俺は笑いながら言う。



「お前、そのうち世の中の女子全員敵に回すぞ」



「え?」



六花は意味が分からないという顔をしていた。



その様子を見て、

俺は改めて思う。



こいつは天然だ。



計算でも演技でもない。



本気で自分を普通だと思っている。



だからこそ。



妙に目が離せなくなるのかもしれなかった。


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