財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて

六花は話し終えると期待するような目で俺を見てきた。

つまり、

「玲央兄様は酷いです!」

「そうだな」

という流れを期待している。

しかし、俺は少し考えた後、正直に答えた。

「でも」

六花の表情が固まる。

「俺に電話をかけてきても、たぶん行かせなかったと思うぞ」

沈黙。

数秒の沈黙。

そして。

「え?」

六花が信じられないものを見る目をした。

俺は当然のように頷く。

「だってファミレスだろう?」

「そうですけど」

「可愛い六花の味覚が狂っちゃうだろうし」

「狂いません」

俺は構わず続ける。

「それに、そんな平民だらけの場所に六花を行かせるなんて心配で心配で仕方がないしね」

六花の肩が少しずつ下がっていく。

期待が崩れていく音が聞こえるようだ。
俺は内心で少しだけ申し訳なく思ったが、本音なのだから仕方ない。

六花は世間知らずだ。

人を疑わない。

優しい。

そして何より可愛い。

そんな子を不特定多数の人間が集まる場所へ放り込むなど、兄として正気の沙汰ではない。

少なくとも俺には無理だった。

六花は小さくため息を吐いた。

完全に呆れた顔である。

だが俺は気にしない。

むしろ別の解決策を考えていた。

「そんなにレストランに行きたいなら」

六花が顔を上げる。

俺は微笑んだ。