婚約者さんは、私に脈アリみたいです。


ーカラーン…

床に叩きつけられるフォーク。

「えっと…ママ、なんて言った……?」

私・姫乃 由希は、もしかしたら聞き間違えかもという、かすかな希望を胸に、もう一度ママに聞いた。
すると、ママは、

「あなたには、生まれる前からの婚約者がいるのよ」


ーカラーン…

さっき拾ったばかりのフォークをもう1回落としてしまった。

いや、通りでおかしいと思ったよっ…!

いっつもニコニコ笑顔で優しいママとパパがこんなに真剣な顔で何かを話そうとするんだよ!

「…で、婚約者って誰…?」

もう、ヤンキーだったら、やだよ!!

てか、生まれる前からってすごくない…?

「それは帰ってきてからね。」

ママがそういうので、ハッとして時計をみると、も、もう7時半…!?

はやく行かないとっ…!

「じゃあ、またあとでね〜♡」

「うんっ!またあとでっ!」

今日は私の入学式。

私は自分の部屋にバタバタと帰る。

カバン、カバンっと…。

私は念のためカバンの中身を確認する。

「え〜と、入学式だし、教科書はいらないよね!あと、筆箱と、あ、お財布も持っていっていいんだ。…ば、売店ってなんだろ…?」

私は、先生からもらったプリントとにらめっこしながら、かばんの中身を確認していると、

「由希お嬢様っ!もう遅刻してしまいますっ…!」
「えっ…!もうそんな時間なのっ…!?」

ガチャッとドアが開いて、メイドの真理が入ってきた。

「はいっ…!もう行きましょうっ…!」

「うんっ…!ママー!パパー!行ってきまーすっ」

「「いってらっしゃーいっ」」

運転手の笹村が車のドアを開いて待っていた。

車はもちろんバスくらいの大きさ。
といってもバスっていう乗り物?に乗ったことがないんだけど。

「ありがとう、笹村」

「いえ、とんでもございません」

「ありがとうございます、笹村さん」

「いえいえ、とんでもございませんよ」

ちなみに真理も私と同級生のため、入学式に一緒に行く。

…って、私の自己紹介してなかったよねっ…!

私の名前は、姫乃 由希(ひめの ゆき)。

今日で高校生になります!
私のパパたちの会社は大企業の姫乃グループ!

パパとママは社長さん。

だから、実質私はお嬢様?だし、みんなからお嬢様よびされてるけど、あんまりお嬢様〜って感じはしない。
内気でネガティブ思考で、何より、イケメンなパパと美人なママに生まれてきたのに、可愛いの『か』もない。


て、ていうか、友達できなかったらどうしようっ…!小学校と中学校とはなんか違うって聞いたし…!!
仲いい子できるかなっ…!

「…様!…ょう様!…お嬢様!由希お嬢様!!」

「わわっ!」

耳元でそう叫ばれ、正気を失っていた私は正気に戻った。

「な、なぜ百面相していらっしゃるのですか…?もう着きましたよ…?」

「あ…ごめんね!真理!!」

そして、私そんな百面相してました!?

その時だ。

フワッと開けていたまどから桜の花びらが車内に入って、私の頭の上に乗った。

「…私たちを迎えてくれているようですね。ほら、はやく行きましょう、このままでは本当に遅刻してしまいます。」

真理の言葉で私は微笑んだ。だが、遅刻という言葉でハッとした私は、ガチャッと車から降りた。

「ありがとう、笹村!またねっ!」

「ありがとうございました。」

「いえいえ、とんでもございません。いってらっしゃいまし。」

私は笹村に手をふると、前を向いて歩き出した。

私の輝く高校生活!頑張るぞーー!!