ひとの傘は持っていかない

盗まれた傘が返ってきた。お気に入りだったから嬉しかった。
「あの…」か細い声が聞こえた。ツインテールの女の子が立っていた。
「…あの、ごめんなさい。勝手に傘を持っていって。許してください。呪わないで」女の子はピンクの花束とチョコレートの箱を置くと、逃げるように去っていった。どしゃぶりの雨の中、ろくに前も見ずに駆けていく。
事故に遭わないといいけどね――赤い傘が、地蔵にかけてあった。