桜の木の下で、出会った僕たち

 その後、僕は咲良に撮り方を教えて、連絡先を交換して解散することになった。
「今日はほんとにありがとう。大好きなカメラで写真も撮れたし、しかもそれを自分のスマホに残すこともできたし」
 今日一番の笑顔で咲良はそう言った。その笑顔でなんだかこっちまで嬉しくなってくる。
「ほんと?それなら良かった」
「じゃあまた今度会おうね。私家もここから近いし」
「そっか。じゃあまた会おう!」
「うん、じゃあ今日はここら辺で。バイバーイ」
 そう言って手を振って咲良は走って行った。その咲良の背中を、僕は手を振りながら見つめていた。
 胸の奥が少しだけ熱くなった気がした。またどこかで会えるかな...なんてね。

 今日は始業式だ。
 咲良と出会ってから、一週間が経過した。あの公園にはもう一度だけ行ったけれど、咲良にはもう会えなかった。

 新しい教室に入ると、去年友達になった小嶋俊介がいた。
 ここで誰も仲が良い友達がいなかったらどうしようという不安が、一気になくなった。
 周りを見ればもう学校に来ている人がほとんどだ。始業式でみんな張り切ってるんだろう。僕は逆に早起きするのが辛かったけど…。
 僕は新しい席にカバンをそっと置き、近くの女子集団から遠回りして、俊介の席に少しだけ駆け足で向かう。
「おはよー今年も同じクラスで良かった〜」
 俊介の席は窓際で俊介は一人黄昏ていた。
「それな。俺も友達が誰もいなかったらどうしようか、めっちゃ不安だったけど光がいてくれてマジ助かった」
 どうやら同じ気持ちだったんだ、と僕は安心する。僕たちはお互いに周りとの付き合いが苦手で、友達が少ない同士の僕たちが離れるのは流石に辛かった。
「僕も僕も、てかさ結構メンバー変わりそうじゃない?」
 さっき見た座席表を思い出しながら俊介にそんな話題を振りかける。
「そうそう、なんかさ花村?みたいな名前なかった?そんな子いたかなと思ってさ、転校生じゃね?」
 花村、花村、花村咲良、咲良?脳内で何度も同じ言葉が繰り返される。まさか、咲良と同じクラスなのか。転校生とか言ってたっけ?同い年?
「えっ?ほんとに?」
「うん、ちょっと見に行こうよ」
 そう言われ、座席表のところに移動した。俊介が指を差した先には、“花村咲良”と確かに書いてあった。
 しかも、僕の席の隣。出席番号順だからとはいえ...そんな偶然...ある?まるで目を何度も擦るような展開中だ。
「何?知ってる人?」
 俊介の声でパッと目が覚めた。なぜかずっと名前を見つめていたみたいだ。そりゃ不思議に思うだろう。
「いやいや、全然全然」
 ドキッとした。焦り気味になんとか誤魔化した。誤魔化す意味も分からないけどなぜか知らないことにした。なんでなんだろう。
 俊介は特に興味を示さず、ふーん、そっか、とだけ言って僕らは俊介の席に戻った。