空に吹く、風の音を教えて。

「浅羽昊透くんって人なんですけど、知りません?」

「さあ?名前聞いたことないし」

「ちなみにお姉さんは何組ですか?」

「わたしは2年5組。1学年10組あるし、他のクラスの人のことなんて覚えてないです」

「そうですか…。ご協力ありがとうございました!」

「はあ…」


川越駅の改札前で張り込みを始めて早1時間…。

光莉ちゃんはインテリJKの呆れた鋭い視線にも屈せずずっとキラキラした瞳で人間観察を続けている。

夕方の帰宅ラッシュが始まり、人が大量に押し寄せるもののなかなか同じ制服の人は見ない。

1時間で奇跡的に2人の女子生徒を見つけたものの、片方は3年生だった。

もういいよ。

そう言おうとしたその時だった。


「風ち〜ん!この子知ってるって〜!」


私は見つけてくれた嬉しさより大声で名前を呼ばれたのが恥ずかしくて早足で駆け寄った。

そこにいたのは、どこか見覚えのある女子だった。


「あれ?もしかして、風花ちゃん?」


…あ。

その声を聞いて古い記憶が一瞬で蘇った。

…覚えてるよ。

忘れるわけ、ない。


「平沢和実ちゃん、だよね?」

「うん、そうだよ。わぁ、なんだか懐かしい。小学校の卒業式以来だね」

「うん…」


続く言葉が思いつかない。

頭が真っ白だ。

本当は聞きたいことが山ほどあるはずなのに。

こういう時出て来ないのは人間あるあるなのかな。

私が口を噤んだきりうーともつーとも言わないため、痺れを切らしたのか、光莉ちゃんが口を挟んだ。


「えっと、立ち話もなんだし、ファミレスでも行かない?つもる話あるっしょ?」


光莉ちゃんのその言葉にいいですねぇ、と和実ちゃんが小さく手を叩く。

私は2人の後に続くようにして歩き出した。