空に吹く、風の音を教えて。

浅羽昊透くん。

私の小学校時代の同級生。

川越市立第三小学校の万年1組に選ばれていた私とは違って彼は3年から5年までそうだった。

浅羽という苗字だから確実に出席番号は1番。

それに加え、成績優秀、運動神経抜群で、性格も明るくてみんなの注目の的だった。

女子からの人気が凄まじかったのは言うまでもなく、男子からも一目置かれるカリスマ的存在で、学級委員長を務めていた。

そんな人となんでもそこそこの出来でクラスに馴染むでも浮くでもなく、ただ空気のようにそこに在るだけの存在みたいな私が深く関わっていたわけがない。

…ってのは、ウソか。

5年になったばかりの頃。

クラス替えがあってちょっとうちのクラスが荒れてた時、私があんなこと言ったから…。

そしていつの間にか話すようになってて。

それで確か…

転校する前の最後の日。

あの日浅羽くんは…

なんで私にあんなこと言って…

どうしてあそこに…。


「あ!見つけた!やっぱし、ここだ!」


ぼんやりと過去を思い返していたら光莉ちゃんの声が図書室中に響いた。

私はシーっと人差し指を口の前に立てた。


「あ、ごめん。ごめん。でもさ、見つけたよ。これじゃない?」


都内版の最後の方のページに掲載されていたそれを見つめ、思いがけず声が漏れた。


「これ、だ…」

「だとしたら、ヤバいよね?この高校、ウチでも知ってるくらいの超有名進学校じゃん」

「こんなとこ通ってたんだ…」


確か偏差値75くらいの超絶頭が良くて東大進学率も驚異の2割越えの高校だったと思う。


「ウチここの制服着てる女子バ先で見た気する。つまり川越から通ってる人いるってこと!ふふ。となれば決まりじゃな」

「…え?」

「駅で待ち伏せして突撃インタビュー!するしかないっしょ?!えっと…名前なんだっけ?そやつの」

「いやいや、ほんと大丈夫だから」

「いーや、ウチがだいじょばないから調べます!だからほら、観念して名前教えて」


光莉ちゃん、悪い子ではないんだけど、ちょっとオタク気質なところがあって前が見えなくなる時があるから。

それで今回がまさにそう。

興味のど真ん中いっちゃったんだろうな…。

仕方あるまい。

観念、するか。


「名前は…」