空に吹く、風の音を教えて。

「うぅ!!くっやしーー!アイツ4組の男子全滅させやがった!」

「まぁ、なんとなく予想出来てたけど。ほら、弥代くん運動神経抜群で4月に短距離走の記録取った時もクラスイチ速かったって男子達言ってたし」

「それならそう言ってよー!売られた喧嘩を買ったら完全敗北しちったじゃんっ…!」

「まぁ、張本人はなんも感じてないみたいだけど。もう帰る準備してるし」


ほんと、何考えてるかわからない人だよね、

弥代悠雅くんって。

弥代くんとは2年に進級した時のクラス替えで同じクラスになった。

1年の時他クラスにすごく口の悪い男子がいるって噂には聞いていたけど、それが弥代くんだと解するのに時間はそんなに要さなかった。

朝の挨拶とか絶対しないし、基本無言で切長の目で睨んでる…ように見えるだけかもしれないけど。

気に食わないことがあると男女問わず、はっきり嫌だとかダメだとか言うし、ある意味で自分の軸がしっかりしていて、ブレブレの私からすれば羨ましくもあり尊敬の念さえ感じていた。

なんて口にしたら絶対嫌味だとか悪態吐かれそうだから言わないけど。

言い方がキツいから誰も近づかないし、私も特別関わりたくないからいつも視界の外に追い出している。

そんな人に真っ向勝負を挑めるのは、メンタル鋼最強女子の光莉ちゃんくらいだよ。


「涼しい顔しちゃって。そういうとこがさらに鼻につくってかさ。なんか苦手」

「あはは…」


苦笑いしながら女子の群れに紛れて流されるまま教室へ向かう。

ドッチボールはクラス全員出なきゃならないから逃げられないし、やるしかないのは分かってる。

だけど夏休みの運動不足が祟って階段を上るだけで足が悲鳴を上げるし、生まれたての子鹿のようにふらふらしてる。


「はぁはぁ…」

「風ちん息上がりすぎ。さては運動不足だなぁ」

「ごめん。ゆっくり行くから光莉ちゃん先行ってて」

「おけまる水産なり〜」


光莉ちゃんは運動が苦手だって言ってるけど基本パワフルだから、なんなく階段を上っていく。

それに引き換え私は…。

同い年なのに、情けない。

あと少しだし、踏ん張るか。

右足を踏み出した、

その時。


「うわっ…!」