空に吹く、風の音を教えて。

水族館を一通り見学し終えた後は、光莉ちゃんの聖地アニメイトに行った。

光莉ちゃんと仲良くなってからアニメは見てはいるけれどオタクになるほどハマっているわけでもなく、光莉ちゃんの心友にはなれないなぁなんて思っていたのだけれど、月雲くんという強力な理解者が現れ、なぜか私はホッとしていた。

逆に弟はアタフタしているわけで。


「風花、音ゲー特訓付き合って。分かった?」


と何度も念押しされた。

趣味が合うとはこういうことか、なんてまるで自分には関係ないみたいな面で見ているものだから、和実ちゃんには、悪しき方向に向かった子供の成長を冷ややかに見ているお母さんみたいと言われる始末。


「和実ちゃんは良い方向に進んだよね」


グッズをあさる2人を眺めながら私がそう言うと、和実ちゃんは柔和な微笑みを湛えた。


「そうだね。それも…昊透くんのお陰なんだ。あの時毎日わたしに希望を与えてくれたから、今のわたしがいる。ほんと、感謝してもしきれないよ」


和実ちゃんの視線の先には少年マンガ原作の今流行りのアニメコーナーを物色している彼がいる。


「それに風花ちゃんにもすごく感謝してる」

「え?」

「学校に戻ってから、昊透くんがいなくなってからもずっとわたしと仲良くしてくれた。今さらかもしれないけど、ありがとう」

「いやいや、そんな。感謝されるほど大したことしてないよ」

「ううん。大したことだよ。本当にありがとう。2人のおかげで今が楽しいよ」


思いがけず感謝のシャワーを浴びて私の心は警報が鳴り出した。

褒められて嬉しいって気持ちと、

瘡蓋をわざと剥がした時みたいな

ジュクジュクとした気持ち悪さと痛みと。

こんなにも複雑な気持ちに今私が持っている言葉では名前をつけられない。

…なんか、やだな。

素直に喜べないなんて。

やだ。

やだよ。

なんなんだろう、この気持ち。

目を逸らそうにも視界に入って来る眩い光。

商品をよく見せるための明るめの照明のせいなんかじゃない。


「昊透くん、わたしもこれ見てるよ。面白いよね。特にこのシーン。原作だとこのページ」

「あぁ、分かる。ここの解釈すっげー悩んだんだけど、声優さんの演技見て正しかったって思った」

「うんうん…!」


頭が良いから話の内容もただの感想大会じゃなくて高尚だし。

2人肩寄せて並んでるとこれが正解なんだなって思う。

光莉ちゃんが読ませてくれた少女マンガよりも私にとっては輝いてる少女マンガみたいな現実の世界。

そこに私はいない。

いてもモブキャラなんだよね。

いてもいなくても関係ない。

ストーリー本編に直接関係しない端役。

その役が私にはお似合いで、

何より楽、なんだ。

だから、

もうこのまま終わりにしよう。

偶然にも再会出来て

幸せな完結を見届けられて、

私はもう満足だよ。


こちらこそ、ありがとう。

私のお陰なんて言ってくれて。

その言葉が私のちっぽけな身体には充分すぎるよ。