「間違いねー!!HARUKAくんの臭いがする!!」
くんくんと鼻を動かし、由依が叫んだ。
「あいく、あの車の中飛び込め!」
由依が指差した先に目を向ければ、存在感を放つ四駆の外車が停まっていた。高さも横幅もとても大きく、角張ったフォルムがとても威圧的だ。トラック以外で、こんな大きい車を初めて見た。シックな黒の色合いに、大きなホイールとクロムパーツのシルバーが美しく光った。
助手席が開いて、後部座席の窓が開いていく。
誰の車かなんて、考える余裕すらなかった。
後ろからけたたましい数のツルの集団が追いかけて来たからだ。由依の手が離れれば、犬のように軽やかにジャンプした由依が後部座席の窓に飛び込んだ。由依の手が離れてスピードに乗ったあたしは、そのまま助手席へと転がり込んだ。
やわらかなクッションと、大人の香りがあたしを包み込む。
物凄い格好で助手席に乗り込んで顔を上げれば、オレオブラウンの瞳が色っぽく光った。運転席から身を乗り出して、あたしの上から助手席のドアを閉めた男性が、あたしを見下ろして口角を上げた。
クロスのチャームがついたゴールドのブレスレットが反射する。
「いらっしゃい」
「……おじゃまします」
カラーサングラス越しに見つめられて、あたしはそのオーラにモゴモゴと呟いた。
「由依、くっさーい!!なんで、生臭い臭いすんの!!」
「しょーがねーだろ!!逃げるのに必死だったんだから!!」
「由依くん、動かないでー!苦しいよぉ!!」
「とりあえず、由依の足がまだ窓の外に出たままだから、引っ張らないと」
騒がしい後部座席に目を向ければ、シオン優空樹理の上に、由依が乗っていた。窓から飛び込んで、三人が受けとめたらしい。
「もう、このまま足出したままでいいんじゃなぁい??」
「樹理ふざけんなよ!!電柱にぶつけたらどーすんだ!!いてーだろ!!」
「由依くん動かないでってばぁー!!」
「3、2、1で、引っ張るから」
何とか由依を車に引っ張り上げて、車内は落ち着いた。第3シートに優空とシオン、第2シートに由依樹理が腰掛ける。しかし、後ろのメンバーなんてどうでもよかった。
あたしは運転席にいる、謎の男をじっと見つめていたんだ。
