春の風が吹いた。
ミルクティーとカフェオレ色の髪が、なびいた。
錆び付いた螺旋階段が、ミシミシと軋む音がする。そして、複数の足音が螺旋階段をテンポよく駆け上がってきていた。振り返れば、螺旋階段を登ったカラフルな集団が続々と屋上に姿を現した。
その光景はまるでセピア色の背景に、一滴一滴鮮やかな絵の具を垂らしたように、彩られていく。
数分も経たないうちに、小さな屋上には入りきらないほどのツルたちが押し寄せるだろう。あたしは彼らから離れるように、一歩一歩ズルズルと後退して、由依の背中に隠れた。
そして、思い切り由依を押した。
「おまっ!!やめろ!!押すな!!仲間だろ!!!!」
「バカ言ってんじゃないわよ!!あんたを引き渡して無事に帰れるんだったら、即効突き出してやるわよ!!」
「お前、最低かよ!!!!」
パーカーをわし掴んで全体重をかけて押しても、身をよじって抵抗する由依はなかなか動かなかった。
しぶとい、くそ犬っ!!!
「あいく、いいか?逃げ道は、一つある。」
顔だけ振り返った由依が、そう言った。
いつもより低く落ち着いた声色に、あたしは由依の体を押す事をやめ、由依の顔を見上げた。カフェオレ色の瞳が夕陽の光りを吸収して、キラキラと輝いた。奥の手を隠し持っていたなんて、思ってもみなかった。
